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在宅医療における訪問薬剤師の近況と現実とのギャップ 後編

2015年12月25日

近年、活発化してきた「在宅医療」への取り組み。しかし、薬剤師にとってはまだまだ課題は多いものです。前編では、訪問薬剤師の実施状況や、エビデンスについて、実状・課題などを見てきました。しかし、患者さん宅で訪問薬剤師として仕事をするには、まだまだ薬剤師の在宅での役割が、患者さんや医師と看護師、在宅ケアスタッフなどへの周知が不足しているという問題があります。
そんななか、すでに活動している訪問薬剤師は、周囲からどのように捉えられ、彼ら自身、どのような想いを持っているのでしょうか?
後編では、彼らの本音と、今後訪問薬剤師がやるべきこと、そして、日本薬剤師会の取り組みなどをご紹介していきます。

■在宅ケアスタッフと訪問薬剤師の本音とは?

2013年にめぐみ薬局の松本真理氏が発表したレポートでは、在宅ケアスタッフと訪問薬剤師へのアンケートが実施されており、彼らの本音を知ることができます。

とくに在宅ケアスタッフが、訪問薬剤師への要望や希望することで目立った意見は、「患者が飲んでいる薬についての情報や注意事項を教えてほしい」「薬について分からないことがあれば、気軽に聞ける存在でいてほしい」「薬を通して、利用者様の体の状態を知りたい(医師からはあまり情報がこないため)」「残薬の整理」など、薬についての専門性を求める内容が多いようでした。
一方、訪問薬剤師への不満として、「丁寧な服薬指導を期待したのに、薬を届けるだけでいつも帰ってしまう」「報告書がいつも同じような簡単なもので意味がない」など、もっとその専門家としての役割を果たしてほしいという要望が目立っていました。

一方、訪問薬剤師の本音としては、「在宅といっても施設在宅が多いため、ほとんど届けるだけになっている」「訪問に時間をかけられず、報告書も書けない」などの、専門性を発揮できない理由が目立っていました。
また、他医療者との関わりについては「ケアマネジャーや多職種との連携はあまりできていない」「医師から直接訪問指示が出るので、ケアマネジャーの介入はない」など、うまくコミュニケーションが取れていないのが現状のようです。

このように、訪問薬剤師たちは、「まだ環境がきちんと整っていない」、「多職種連携の具体的なやり方が分からない」などの問題を抱えていることが分かります。

■訪問薬剤師が意識すべきことは?

訪問薬剤師はいま、理想と現実のギャップが非常に大きいようです。この現実と理想のギャップを埋めるための解決策として、個々の薬剤師に次のようなことが求められるといわれています。

・医師、看護師、ケアマネジャー、訪問看護ステーション、介護施設などとの連携・協働
・在宅訪問業務の応需状況の把握と情報公開、患者・医療福祉関係者への周知
・在宅医療のスキルアップのための教育を受ける・構築する
など

在宅医療において、もっとも重要なのが多職種連携です。「協働」、つまり横のつながりを重視することは、薬剤師にとっても必要不可欠です。また、薬局が在宅医療をおこなっていること自体を、患者・医療福祉関係者への周知していくことも、薬剤師が積極的に活躍するためには大前提として必要であることが分かります。

そして、専門性を高め、在宅ケアの技術をより高めていくためにも、訪問薬剤師としての教育制度を充実させることは、薬局運営側にも求められることでしょう。

■訪問薬剤師は必要とされている!

いま、薬剤師たちは「在宅推進」のために日夜、励んでおり、いってみれば大きな変化の時期ともいえます。なかには、先が見通せない状況のなか、ただひたすら邁進しなければならないとプレッシャーに感じることもあるかもしれません。

しかし、介護保険利用者の日常生活の状況に関するデータを見ると、「薬の管理が必要」と答えた人が70%で、もっとも高かったという事実があります。また、先に紹介した、在宅ケアスタッフによる、訪問薬剤師に対する本音からも分かる通り、いま、在宅の現場では、薬剤師による服薬指導や残薬管理が大いに求められているのです。

つまり、訪問薬剤師は潜在的に確かに必要とされているのにも関わらず、十分に周知されていないがゆえに、残薬が解消できなかったり、訪問看護だけに頼ったりというもったいない状況があると考えられます。

■日本薬剤師会による「在宅療養推進アクションプラン」の動きも

日本薬剤師会は2010年に「在宅療養推進アクションプラン-薬剤師が地域のチーム医療に参画するために」を策定し、薬剤師が地域単位で在宅医療に取り組むための環境整備をめざして活動しています。
薬局・薬剤師のスキルアップや、地域の在宅応需薬局をWeb上で情報公開するツールの開発・提供、ほかの医療・介護従事者への積極的なアプローチをするためのモデルづくりなど、さまざまな取り組みをおこなっています。

2014年3月20日の活動報告によれば、今後在宅応需薬局リストを、地域支部薬剤師会の全市町村で作成することや、24時間体制・無菌調剤などの地域における応需体制の整備、サポート薬局制度の活用などを今後の取り組みとしてかかげています。

また、在宅の現場で薬剤師が十分に活用されておらず、看護師などが薬剤管理を担っている場面も少なくない状況を踏まえ、あらためて薬剤師が本来持つ「薬剤管理の役割」を見直す必要があると呼びかけています。

薬剤師は、いま、地域のなかで、非常に多くの期待が寄せられています。その役割をきちんと果たすためにも、ぜひ自信を持ってその専門性を高め、うまく他職種とも連携していきたいものです。


知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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