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増える奨学金を滞納する若者たち ~確実に救済される体制づくりを~

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増える奨学金を滞納する若者たち ~確実に救済される体制づくりを~


いま、日本学生支援機構からの奨学金を返済できない若者たちが増えています。
この滞納に対して、きびしい取り立てや措置がおこなわれている現状があります。滞納3ヶ月で個人信用情報機関に個人情報が登録され、9ヶ月以上におよべば、財産の差し押さえが可能になるなどです。
奨学金は、本来、学生をサポートするためのもの。この取り立ての事実には誰もが首をかしげてしまうのではないでしょうか。

日本学生支援機構は、奨学金の取り立て強化の一環として、延滞をあらかじめ阻止するため、滞納時には個人信用情報機関に登録することに同意する同意書の登録を義務付けています。
とくに薬学部は、2006年から6年制になったことで、奨学金を利用するケースが以前よりも増えていることが予想できます。これにより、薬学生および卒業生のうち、今後ますます奨学金を返済できない人が増えていくことが懸念されます。

■奨学金延滞者が増えている現状


奨学金滞納者にはどのような事情があるのでしょうか。
その主な原因は、奨学金を借りたはいいものの、卒業後、十分な収入を得られる職に就くことができなかったり、そもそも莫大な学費を払うめどがたたなかったりするところにあるようです。2012年度の統計によれば、日本学生支援機構の奨学金滞納者は33万4000人で、滞納額は925億円にも上るといいます。1998年の15万人に比べて、滞納者は倍以上に伸びています。

■奨学金滞納に対する措置と、それに対する反論


このような奨学金滞納に対して、きびしい措置が取られている現実からは、けっして目をそらすことはできません。
日本学生支援機構は、滞納者の情報を個人信用情報機関に登録する措置を取っています。奨学金を現在返還中の人だけでなく、奨学金を利用している現役学生にも、万が一奨学金を滞納してしまったときには情報機関登録に同意する同意書(個人信用情報の取扱いに関する同意条項)を提出するよう求め、同意しなければ奨学金を打ち切るという動きも見せています。
日本学生支援機構側も、本当のところ、厳しい取り立てなどしたくないのでしょう。そのため、返せなくなるのであれば、貸さない方向へと動いているのです。

しかし、この措置はまるで民間の金融業者のそれと似ているともいわれています。たとえば、3ヶ月以上の滞納で、クレジットカードの利用が停止、9ヶ月以上の滞納で、財産の差し押さえが可能になるなどです。このことには、誰もが違和感を覚えざるを得ないでしょう。

このきびしい取り立てや措置、同意書登録の義務などに対して、反論の声も上がっています。
たとえば、京都では、「本来、教育を受ける権利を保障するための奨学金を、民間のローンと同様のものに変質させるものだ」と主張する、学生50人によるデモが起きました。

■奨学金を返せないことに対する将来リスク


奨学金を返さずにいると、どのようなリスクがあるのでしょうか。
具体的にはつぎのような事態に直面することになります。
・ 延滞し続けると、年10%の延滞金が課される
・ 滞納3ヶ月で個人信用情報機関に個人情報が登録される
・ 9ヶ月以上の滞納で、財産の差し押さえが可能になる
・ 将来的に、ローンやクレジットカード利用が困難になる
一番大きいリスクは、個人信用情報機関に延滞の旨が記録され、社会的に不利になることです。
いわゆる「ブラックリストに掲載される」というわけです。
これは、実際、ブラックリストがあるというよりは、氏名、住所、生年月日、電話番号、勤務先や、貸与額、最終返還期日、延滞などの情報が、個人信用情報機関に提供されることを指します。

■奨学金延滞の原因は?


一般的に、奨学金を延滞する人が増えている理由として、つぎの2つがあるといわれています。
・安定した仕事に就けない人が増えていること
・学費の高騰で、借入額が多くなっていること
また、延滞がはじまった理由としては、統計上、「家計に収入が減った」という理由がもっとも大きいようです。奨学金問題に取り組む専門家は、いまの制度が、利用者の大きな負担になっているとも言及しています。
このように、現在、奨学金滞納にまつわる問題は、とても深刻化しています。とくに、6年制を取る薬学部にとっては、もはや他人事ではありません。

■奨学金滞納に救済措置を!


この奨学金滞納問題に対する救済措置として、減額返還制度、所得連動返還型の制度などがありますが、まだまだ不十分の現状があります。これからは、いかに滞納者を救済していくかが問われています。
●日本学生機構による奨学金返済滞納の救済措置
・減額返還制度
返済期間を延長して一回の返済額を減らす制度。
災害、傷病、その他経済的理由(年収300万円以下)により、奨学金の返還が困難な人が該当します。

・所得連動返還型無利子奨学金制度
卒業後に一定の所得がなければ、奨学金の返済を猶予される制度。
指定の基準を満たし、家計支持者の所得金額が年収300万円以下の人が該当します。

■奨学金滞納者が確実に救済されるような体制づくりを


奨学金の返済に苦しむ人々に対しては、NPO法人や奨学金問題に取り組む団体などの相談機関を利用するようにとの呼びかけがおこなわれています。
最近では、奨学金の返済に苦しむ人たちを支援するために2013年3月、弁護士らによって東京都内で「奨学金問題対策全国会議」が設立されたり、2013年6月には「奨学金問題と学費を考える兵庫の会」が結成されたりと、全国各地で、つぎつぎと奨学金問題に取り組む団体が立ち上がってきています。
また、薬学生であれば、薬局のなかには、独自の奨学金制度を設けているところもありますし、薬剤師・薬学生の就職や転職を支援する紹介会社に相談してみるのもひとつの手段となるでしょう。

奨学金を滞納している人の90%が、年収300万円以下の若者たちであるという現実に、将来的には、延滞金はなくし、すべて無利子にすべきとの声も上がってきています。
今後、ますます救済措置や相談機関などが進歩し、奨学金の滞納に苦しむ若者たちが的確に救済されるような体制づくりが求められます。


知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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