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薬剤師インタビュー

2011年1月25日

上町亜希子さん
神戸学院大学薬学部 臨床薬学部門 講師
97年神戸学院大学薬学部生物薬学科卒業後、大阪ファルマ・プラン(あおぞら薬局、そよかぜ薬局)入社、在籍中に、西淀病院、柏花診療所において薬剤管理指導業務研修実施。
05年国立大学法人大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了、07年4月神戸学院大学薬学部臨床薬学部門講師。
著書に「本当に患者の利益になるPOSと薬歴の活用(薬事日報社)」など。

―POS、薬歴の活用について重要なことは何でしょうか。
POSを全員が導入したらいいと言っているわけではなく、患者さんのことを考えたケアをやっていこうとすると、POSが自然とあてはまるんです。あくまでも、患者志向であることです。
薬剤師のための薬歴になってはいけません。患者さんが困っていることをちゃんと聞いた上で、どう関わりを持てるかです。説教薬剤師になってはいけません。善意が余計なお世話になってしまっては意味がありません。
きれいにPOSする必要はなくて、患者さんが何に困っているかキャッチすることです。

例えば、「プラバスタチンナトリウム」という血液中のコレステロールを減らすお薬があります。ずっとまじめに飲んでいて、薬剤師の話もよく聞いてくれる患者さんが、ある日突然、「薬剤師さん、私、お薬飲まないといけないんですか?」と言ったとします。
こんな場合には、多くの薬剤師は「コレステロール値が高いから、飲んでください」「コレステロール値を下げないと動脈硬化を起こして、大変なことになりますよ」と言うでしょう。
薬剤師は、こんな恐ろしいことが起きますという説明はしっかりするんですが、患者さんの裏側に何があるかを想像しようとはしません。実は、この人は、数週間前に入院している友達の見舞いに行ったんです。どうして入院したのか友達に聞いたら、薬の副作用で入院したといいます。
「この薬だけは絶対飲んじゃいけない」と聞いたのが、自分が飲んでいるのと同じ薬でびっくりしたんです。

それを聞いた場合ですと説明の仕方も変わってきますが、薬剤師は原因を聞かずにただ、「飲んでください」しか言わないことが多いですね。そんなことは誰でも言えます。
話を聞いていれば、「副作用は全員に出るわけではなく、もし出るときにはこういう兆候があります」と患者志向の説明ができます。多くの人が「たばこは身体に悪い」ということは知っているけれど、止められない人が山ほどいます。薬剤師は「知識・情報提供パターン」に陥りやすいんです。
だけど、知識だけで患者は動いてくれません。「たばこが値上がりしたから止めよう」とか、「健康診断で肺が悪いと言われたから止めよう」など、何か気づきやきっかけがないと動いてくれないんです。
でも、薬剤師はいかにたばこが恐ろしいものかという説明を延々と説き続けます。

―薬剤師のお仕事はメンタルな面とかなり関わってくるんですね。

風邪をひいたとき、タミフルなどは放っておいても飲んでくれますが、生活習慣病は分かっていてもやらない人が多いんです。でも、分かったときにはもう遅い。
ですので、モノを通して人を見るトレーニングをしておかないといけません。結局は人と人との関わりで、これからはさらにそれが強くなっていくと思います。

―患者さんの中には口で言っていることとやっていることが全然違う人もいますか。
「はい」と言いながら、薬を全然飲んでいなかったり…。
患者さんには患者さんのストーリーがあるので、そこを聞き出す努力も必要です。すごく忙しいときに、ずっと話を聞くことはできませんが、患者さんにとって、聞いてくれる人がいるだけでも貴重な存在ですね。一度、研究テーマでやろうと思っていますが、患者と薬剤師が関わったときに、9割方、薬剤師がしゃべっています。
いらいらしているときに、誰かに話を聞いてもらうと、気の利いたアドバイスをもらわなくてもすっとすることはありますよね。
聞くだけでもケアになります。


―ところで、上町さんはとてもフレンドリーで話しやすい雰囲気を持っていらっしゃいますが、もともと人見知りしない性格だったんですか。
いいえ(笑)。昔は人見知りが激しくて、人前で話せなかったんです(笑)。だから、親がびっくりしていますよ。
実は、初めの頃は説明系の超まじめな薬剤師だったんです。
でもそれで失敗したことがあったんです。
あるとき、1時間かけて懇切丁寧に説明して、患者さんが全く指示に従ってくれなかったことがありました。「なんでこんなことが起きるわけ?」と思って悩み、それ以来、変わりました。
学生のときは、「こんにちは」も言えない子だったんですよ(笑)。
でも、それじゃあ商売にならないと気づきました。

―今は薬局でもお仕事をされているんですか。

現在は週1回、たった4時間ですが、薬局の窓口で調薬業務に携わっています。患者さんと接するときには、聞くことを多くするよう心がけています。

―「ヒヤリ・ハッと体験」について、どう思われますか?

先日、飛行機の管制ミスによって有罪判決が出てしまいましたが、それと一緒だと思います。起こした人は悪いですし、あってはいけないことですが、人間はミスを起こすものでもあります。
私も現場に立つときは緊張します。ミスを犯してしまったら、絶対、次は犯さない対策がとれるか。過密労働で起きてしまったのか、バックグランドも検証しなければいけません。

就職するのであれば、そういうことができているところに就職したいですよね。いい意味でも悪い意味でも緊張感がある仕事です。
少しのミスが積み重なって、どんと大きい事故が起きるというのは定説ですが、いきなり大きい事故が起こることもあります。
たとえ自分の体調が悪くてもコントロールできる力、切り替える力を身につけることが必要です。
遊びの延長で仕事をしない。“白衣を着たら薬剤師”という自覚が必要です。

上町 亜希子(かんまち あきこ)

【学歴・職歴】
1997年3月 神戸学院大学薬学部生物薬学科卒業
1997年4月 有限会社大阪ファルマ・プラン あおぞら薬局、そよかぜ薬局
       (在籍中に、西淀病院、柏花診療所において薬剤管理指導業務研修実施)
2005年3月 国立大学法人大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了
2007年4月 神戸学院大学薬学部臨床薬学部門 講師

【所属団体】
日本薬学会、日本医療薬学会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本POS医療学会、日本社会薬学会、
日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会、日本医学教育学会

【その他】
2009年4月より日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会理事
2008年4月より兵庫医療大学薬学部非常勤講師「医療コミュニケーション」担当

【著書】
2005年8月 「本当に患者の利益になるPOSと薬歴の活用(薬事日報社)」(単著)
2006年10月「日経DIクイズ(日経BP社)」(共著)
2009年5月 「薬学生・薬剤師育成のための模擬患者(SP)研修の方法と実践(じほう)」(共著)

【原稿執筆】
2006年8月~2009年3月
ファーマネクスト(じほう社)にて「Community Based Pharmaceutical Care次世代SOAP薬歴を目指して」連載
2007年10月~
日経ドラッグインフォメーション(日経BP社)「薬局何でも相談室」

知っトク!おトク!豆知識

相手に敬意と親近感をあたえる「おじぎ」の仕方
近年ではあいさつと並んで重要なコミュニケーションツールの一つである「おじぎ」
女性は手を前に重ね、男性は横に添えるのがおすすめです!
では、その種類と基本所作をご紹介します。
【会釈】朝のあいさつやすれ違いで使う軽いおじぎです。一般的に腰から15度くらい傾けます。
【敬礼】お客さまをお迎えするときにつかいます。腰から30度の角度で頭を下げます。
【最敬礼】お礼・お詫び・お客さまの見送りをするときにつかいます。きちんと声をだして言葉を添え、角度は45度で視線は自分の足へ。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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