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薬剤師インタビュー

2012年1月25日

前田桂吾さん
株式会社フロンティアファーマシー フロンティア薬局浅草橋店
在宅・施設調剤部 部長 在宅医療薬剤コーディネーター
1997年、北里大学薬学部薬学科卒業。230床をもつ中小規模の病院に就職。調剤、製剤、病棟の業務に従事したほか、緩和ケア病棟の立ちあげにも携わる。2009年8月、フロンティアファーマシーに転職。
主に在宅療養中の医療依存度の高い患者を対象とした在宅調剤専門の店舗、フロンティア薬局浅草橋店に配属される。2010年2月、管理薬剤師に。2011年より、医療機関との交渉などを行う在宅医療薬剤コーディネーターとしても活躍している。

―在宅調剤専門の薬局にお勤めですが、利用なさっている患者さんは、どのような方が多いですか?

在宅調剤というと、一昔前までは慢性疾患の患者さんの利用が多かったのですが、状況は変わってきています。
フロンティア薬局浅草橋店を利用していただいているのは、医療依存度の高い患者さんがほとんどです。具体的には、末期がんの患者さんが約5割、腸に疾患を抱えていて高カロリー輸液を必要とされている方が2~3割、残りが慢性疾患の患者さんですね。

―医療依存度の高い在宅専門の薬剤師として働くときに、もっとも大切なことはなんでしょう?

在宅調剤のニーズをもっている患者さんの多くは、生きていくために医療サービスを受けなければならない方たちです。だからこそ、「患者さんの立場になって考える」ことが、より強く求められる。
最近は、ふとした瞬間に「医は仁術、とはよく言ったものだな」と思ったりします。薬剤師の免許は、もちろん自分自身の生活を守るためのものだけれど、患者さんの利益になるような仕事をするためのものでもある。「Quality of “My” Life」を考えるだけでなく患者さんの生活のクォリティについても同じように考えられる人、誰かの役に立つということにやりがいを感じられる人でなければ勤まりません。

たとえば、締め切り時間を過ぎてから処方箋が届いたとしますよね。事務的な考え方をすれば「翌日になります」という対応でもいいのかもしれない。でも、「待ってるよね。ないと困るよね」と想像して、残業もいとわずに対応できる―そういう人にこそ、在宅調剤の現場で働いてほしいと思います。

―医療依存度の高い方の在宅調剤で、難しいと感じるのはどんなポイントですか?

現場レベルでは、患者さんやご家族の方に心を開いていただくことですね。医薬品をお届けしたときに、ご自宅にあげてもらうハードルがとても高いんです。がん末期のご主人が在宅調剤を利用されているとします。お宅にうかがうと、奥様が玄関に出ていらっしゃるわけですが、「直接容態を確認する必要がある医師や看護師ならともかく、薬剤師にまで家の中の様子や衰弱した姿を見せたくない」と思われるようで、玄関先でお話しするしかできないことも多いんです。「お薬を届けてくれる人」というだけでなく、もっとわたしたち薬剤師を有効に利用してほしいと思っても、そのような関係を築けるようになるまでが難しいですね。


―利用される方にハードルをさげてもらうために、どのような工夫や努力をなさっているのでしょうか。

まずは、ご家族と根気強くコミュニケーションを取り続けます。
緩和ケアや高カロリー輸液を必要としていらっしゃる患者さんにとっては、医療は「治療」というよりも「生活の質を高めるもの」という意味合いが強い。そこで、「全面的にバックアップしていきたい」という気持ちがあることを伝え、薬剤師として生活を支えるうえで必要な情報を教えてほしい、とアプローチを続けています。

―具体的には、どのような方法を取っていらっしゃいますか?

人によって得手、不得手があるので、一概にこういう方法で……というのはありません。薬剤師一人ひとりが、患者さんのこと、ご家族のことを真剣に考えていくなかで、さまざまなアプローチをしています。
わたし自身は、こどものころに経験したことをお話しする場合がありますね。10歳のときに大病をして、小学校5年ではじめて入院。中学1年で大腸を全摘しています。
以前、大腸がんの患者さんを訪問したとき、ご主人を在宅で看ている奥さまが少しナーバスになっていらして、最初は玄関先でお話することしかできませんでした。それが、あるとき「じつは僕もこどものときに大腸を摘出してるんですよ」とお話ししたら、一気に心を開いてくれた。「自分たちのことをわかってくれる」と感じてくださったんだと思います。
そのあとは、ご自宅にあげていただけるようになりましたし、いろいろ相談もしてくださるようになりました。患者さんご本人にお会いすることもできましたし、「薬剤師の前田さんにも、いつもお世話になってるんですよ」とご主人に話してくださったときは、ほんとうに嬉しかったですね。

―在宅とは言っても、病院の薬剤部に近いニーズに対応していますね。

そうですね。病院の薬局、病院の薬剤師に近い立ち位置だと思います。
医療依存度が高いまま退院してきた患者さんは、チーム医療でなければサポートが成立しません。地域全体を「病院」と見立てて、医師、看護師、薬剤師などが連携していく必要がある。薬剤の専門家として、必要なものを必要な時間に、しかもできるだけ早くに対応するサポート体制が求められるんです。

―フロンティア薬局浅草橋店では、どのくらいのエリアをカバーしているのですか?

東京23区の東側半分と、千葉県の一部もまわっています。
40~50施設の医療機関からの処方箋を受け付けていて、ひと月あたりの訪問件数は、のべ300~350件になります。

―範囲が広く、移動などもたいへんだと思いますが、どのような体制で対応されているのでしょう。

現在、薬剤師は社員5名とパートさんがいます。
実際に訪問しているのは、そのうち4名。いままでは、実際に訪問する薬剤師が調剤をしてお薬を届けていましたが、追加の処方箋に対応する必要がでたときなど、出先から薬局まで戻ってこなければならないのは効率が悪い。これからは調剤と訪問を分担して、いざというときには訪問巡回中の薬剤師のところまで、ほかのスタッフがお薬を届けられるようにしたいですね。

―最近では、店舗での調剤を行いつつ在宅調剤にも力を入れている薬局が増えています。しかし、在宅専門というのは珍しいのではないでしょうか。

当薬局は、たしかに特殊な形態かもしれません。無菌室もありますし、麻薬の扱いも種類が多い。しかし、うちのように専門性の高い在宅調剤だけを担う薬局は、たくさんは必要ないけれど、ぜったいになければならない存在だと思っています。
慢性疾患の患者さんに対しては、門前薬局などを中心にようやく在宅調剤の体制が整ってきましたが、当薬局が必要とされるのは、店舗営業を行いながら時間に余裕のあるときに対応するというわけにはいかないケースがほとんどです。店頭で処方箋を受け付けての調剤と在宅調剤の両方をこなそうとすれば、薬局に来られる方にも、在宅でお薬を待っておられる方にも、ご迷惑をおかけすることになる。それが、在宅調剤に特化している理由です。

「医療機関の理屈」や「医療従事者の理屈」ではなく、「患者さんの理屈」で仕事をしていきたいと思っています。 その視点だけは、ぜったいに忘れたくない。
患者さんに向いて仕事をするなかで、同じように熱い想いを抱いている同業の人たちとつながっていくことが、いまのわたしの「こだわり」です。実際に交流を持つ時間はなかなか取れませんが、仕事を終えて自宅に帰ってから、フェイスブックでほかの薬剤師さんたちが発信していることを読むのが日課になっています。仲間の熱い気持ちに触れることで、「がんばろう」という気持ちを新たにしています。

知っトク!おトク!豆知識

乾燥したオフィス、電話を取ろうとしたら喉が…
乾燥で喉がイガイガする、お客様の前で咳が出ると困る、そんなとき役に立つのど飴。
しかし、常にのど飴をなめていると良くないコトも。 口内になにか入っていると、脳が「何か食べている」と認識し、「蓄えの時間」と判断します。 すると代謝が悪くなるので痩せにくくなります。
さらに、胃に「消化せよ」と指令を出すので胃液などの分泌が盛んになり、胃酸過多状態で 調子が悪くなることもあります。また、口内炎や虫歯の原因にもなってしまいます。 のど飴は手軽にトラブルを緩和してくれますが、ずっと口の中に入れているのは避けましょう。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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