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薬剤師インタビュー

2014年3月25日

長谷川聰さん
株式会社フレディ
タカノ薬局 湘南秋谷
管理薬剤師・NST専門薬剤師(正式名称:栄養サポートチーム専門療法士)
1997年星薬科大学薬学部薬学科卒業。1999年星薬科大学大学院医療薬学専攻を修了し、医療法人金沢内科クリニックに入職、2000年より関口調剤薬局に勤務。おもに在宅調剤に携わる。2006年に日本静脈経腸栄養学会「NST専門療法士」の認定を取得する。2009年、タカノ薬局に転職。2013年6月、湘南秋谷店の新規立ち上げにより、管理薬剤師として勤務する。現在は、湘南秋谷店の薬剤師として、外来の処方箋の応需と在宅調剤を担当。また、神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会の世話人など、業務外でも「お口から食べることを支援する活動」を続けている。

―薬学部に進学し、大学院まで修了された理由は?

化学が好きで、手に職があったほうがいいなと思って薬学部を選び、軽い気持ちで大学院に進みました。当時の薬学部は4年制で、病院での実習も最大で2週間と短かった。大学院で医療薬学を専攻したことで、大学病院で半年間実習することができました。製剤、外来、調剤など順番にまわりましたが、患者さんと接する機会はそれほど多くありませんでしたね。

―最初の就職先は内科のクリニックでした。どのようなお仕事をなさっていたんですか?

就職したクリニックは治験実施医療機関でもありました。一般診療のほかに、多数の方を対象に検証をおこなうフェーズ3や新薬として認証されたあとのフェーズ4の治験をおこなうクリニックのなかで、治験薬管理者や治験コーディネーター的な仕事が多かったです。扱うお薬も治験薬が中心だったので、お薬の知識は偏りますし、患者さんと触れ合うことも少なかった。薬剤師としてもっと幅広い経験をしたいという気持ちから、1年半ほどで調剤薬局に転職しました。

―転職先の調剤薬局で、在宅調剤を担当されたそうですね。

ほかに在宅専任の薬剤師がいなかったこともあって「とにかく行ってこい」という感じで担当することになりました。無菌調剤室を持って在宅調剤を請け負っている薬局が少なかったので、在宅調剤の9割はTPN(中心静脈栄養法)の患者さんでした。右も左もわからない状態からのスタートだったため、現場で経験を積みつつ、本で調べたり、製薬会社が主催する勉強会に参加したり、学会に出席したりして、TPNについての知識を身につけていきました。

―どのぐらいのエリアで、何人ぐらいの患者さんを担当なさったんですか?

関口薬局時代は、三浦半島全域に患者さんがいましたし、場合によっては川崎ぐらいまで行くこともありました。9年間で担当させていただいた患者さんは、のべ300人から400人だと思います。在宅に向けたTPNは、9年間でずいぶん内容が変わりました。担当しはじめた当初は無菌室で混注してお届けすることが多かったんですが、だんだんとキット製剤も充実してきましたし、いまだったら胃ろうや経口栄養摂取という選択肢もあるような患者さんも当時はTPNで対応していて、最後のほうは、がんの疼痛を管理するインフューザーの混注が増えました。現在のタカノ薬局では、秋谷地域を中心に、逗子から三浦市ぐらいまでの範囲を担当しています。

―長谷川さんは、NST(栄養サポートチーム)専門療法士の認定資格も持っていらっしゃいます。栄養サポートの重要性に気づかれたきっかけは?

口から食べるにしろ、TPNにしろ、生きていくうえで栄養を摂取することは必須です。外来で薬局に来られる方は自力で外に出られるわけですから、食べたいものを買いに行くことができますよね。でも、在宅調剤で栄養サポートを必要としている患者さんは外に出ることができないし、食べることもできないわけで、TPNや胃ろうが「摂取する栄養」のほぼすべてを担うことになる。調整を誤れば、とうぜん患者さんの身体に変化が現れます。栄養が多すぎれば太るし、足りなければ痩せたり栄養失調になったりするんです。TPNの製剤をお届けするだけではなく、「きちんと管理していかなければいけない」と強く思うようになりました。

―NSTにおける薬剤師のおもな役割はなんですか?

NSTは、患者さんの栄養状態を把握し管理するため、職種の壁を越えて協力しながらサポートしていくチームです。医師、看護師、薬剤師、歯科医師、歯科衛生士、リハビリテーションスタッフなどの医療従事者と栄養士、医療機関内のチームであれば医療事務スタッフ、調理や配膳を担当するスタッフなどまで、幅広く関わってきます。薬剤師がNSTのなかでいちばんやらなければいけないのは、お薬と食事のバランスをみることです。お薬の副作用で味覚障害や食欲不振、下痢や便秘などの症状が出ることもありますから、その部分を管理していく。必要があれば処方変更を提案しますし、管理栄養士の方と相談することもあります。

―認定資格まで取得しようと思われたのはなぜですか?

静脈栄養や経腸栄養を必要とする患者さんの栄養サポートについてかなり深く学んできたという自負があったので、ここまでやったなら認定資格も取得したい、と希望しました。ただ、調剤薬局で在宅調剤の仕事に携わりながら、認定資格を取得するのはたいへんでしたね。資格を取るためには、実地研修を受け、学会などに参加して既定の単位を取得したうえで、マークシート式のペーパーテストに合格する必要があります。実地研修は、現在は40時間ですが、わたしが取得した当時は80時間でした。朝から夜までフルタイムで研修を受けても10日かかります。わたしの受け入れ先では、「研修は週1回4時間」という体制だったので、半年間、毎週半日は職場を離れなければなりませんでした。人数に余裕がある薬局でもなかったので、職場の理解がなければ取得は諦めていたと思います。当時の職場だった関口薬局には、もともと学ぶことを奨励する風土があって、サプリメントアドバイザーなどの認定を取得したスタッフもいましたが、「がんばれよ」と言ってくれた社長や、協力してくださったスタッフの方々には、本当に感謝しています。

―認定資格を取得していてよかった、と思うことはありますか?

認定資格を取得したことで人とのつながりができたことは、とてもよかったと思います。NST専門療法士は、薬剤師だけでなく、看護師、管理栄養士、臨床検査技師、歯科衛生士、リハビリテーションスタッフといったコメディカルの職種を対象としているので、資格取得を通じて薬剤師以外の方々との人脈が広がりました。意見や情報を交換したり、お互いの専門分野のことで相談しあえたりする仲間がいるのは心強いですし、ほかの職種の方から得た知識、たとえば自宅療養中の方がかんたんにできるリハビリの方法などを現場で活かすことができるのも、資格を取得したメリットだと感じています。

―若手の薬剤師にも、NST専門療法士の資格取得をすすめたいと思いますか?

受験資格を得るためには、医療・福祉施設で5年以上の勤務経験を積んだうえで、学会への参加、実地研修などが必要です。薬剤師として働きながら資格を取得するためには、職場の理解も必要ですし、かんたんなことではありません。しかし、肩書きは知識を持っていることの証ではありません。栄養のことを考えるのは、NSTの認定資格を持っていなくても、薬剤師でなくてもできる。家族の食欲が落ちていたり、食べるスピードが遅くなっていたりしたら心配するでしょう? その延長線上で、患者さんに想いを馳せていけばいいのだと思います。ちゃんと食べられているのかな? 歩くのがたいへんそうだけど買い物には行けるのかな? 一見他愛もない疑問点を一つひとつ見ていくなかから、患者さんの栄養状態を把握することが大事だと思います。

―在宅医療において「オールラウンダー」と言えるのは、どんな薬剤師でしょう。

患者さんが生活されている場の全体的な雰囲気に注意を払い、ほかの在宅医療・介護スタッフと上手に連携できる薬剤師だと思います。家のなかまで入らなくても、生活の様子が見えることはあります。たとえば、いつもきれいに手入れされていた玄関先の花壇が荒れてきている。それだけも、なにか問題が生じている可能性は考えられます。ご本人やご家族から直接お話をうかがってもいいですし、それが難しければケアマネジャーや看護師に報告して注意して見てもらうようにするだけでもかまいません。自分ひとりで解決しようとせず、わからないことは医師や看護師、ケアマネジャーに託せばいいんです。患者さんに対するアンテナをたくさん持っている、そういう薬剤師がオールラウンダーなのではないでしょうか。

―最後に、今後の目標をお教えください。

現在勤務しているタカノ薬局 湘南秋谷は、昨年、秋谷地域に診療所ができたことがきっかけで新設された薬局です。現在、わたしは秋谷・久留和地区で数少ない薬局で働く薬剤師という立場なんですが、地域の方々に支えられてもいる。夜遅くまで薬局に残って仕事をしていると、シャッターが閉まっていても、ありがたいことに近所の方が差し入れを持って訪ねてきてくださったりするんです。これから先も、あたたかく見守ってくださる地域のみなさまに支えられながら、この地域の方々を支えていくパーツのひとつとして機能し続けたいと思っています。

薬局の近くから見える富士山です。
訪問中も「富士山ポイント」に差しかかると、いつも見えるかどうか気にしていますね。天気によって、見えるときと見えないときと半々ぐらいなんです。富士山が見えると励まされるような気がして、今日もがんばっていこうと気持ちが引き締まります。

知っトク!おトク!豆知識

サビオ?リバテープ?救急箱の主役です!
日常のちょっとしたケガをしたときに大活躍する「ばんそうこう」。実は地域によって呼び名が異なるのです!
たとえば、熊本県を中心とした九州ではリバテープ、北海道ではサビオと呼ばれることが多く、東北地方ではカットバン、関東はバンドエイドがメジャーです。サランラップ、宅急便などのように、特定の商標名が一般名称のように定着しているものはありますが、「ばんそうこう」は、複数の商標名が定着しているうえ地域的な特徴も大きい、社会言語学的にユニークな存在です。みなさんは「ばんそうこう」のこと、なんと呼びますか?

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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