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薬剤師インタビュー

2015年12月25日

山口洋介さん
株式会社ファーサス代表取締役
薬局お茶の水ファーマシー管理薬剤師
株式会社ザイシ取締役
薬剤師
2000年、九州大学薬学部製薬化学学科卒業、2002年、九州大学大学院薬学府創薬科学研究科修了。内資系製薬メーカーに7年間勤務後、2009年5月、起業準備のために退職。調剤薬局に薬剤師として勤務しながら、筑波大学の公開講座でサービスサイエンスを学ぶ。2012年9月、株式会社ファーサスを設立、代表取締役に就任。サービスサイエンスに立脚した患者満足度調査のコンサルティング、薬剤師向けイベントの企画運営、スマートフォンアプリの開発などを手がける。2015年9月、薬局お茶の水ファーマシーを開局。2015年10月、イベントの企画運営をおこなう株式会社ザイシを設立し、取締役に就任。

―薬剤師を目指したきっかけからお聞かせください。

成り行きで薬剤師になっていた感じなんです。高校時代になりたかった職業は、塾の講師。中学のときに通っていた学習塾の先生方がとてもおもしろくて、なんとなく将来を考えたときに自分も教鞭を取りたいと思うようになっていました。その学習塾の講師になるには、九州大学を出る必要がありました。生物・化学で受験できる理系の学部という理由で薬学部に進学して薬剤師の免許を取り、80人中50人が大学院に進学するという環境だったため修士課程まで進みました。けっきょくその学習塾に就職はしませんでしたが、学生時代に念願叶ってアルバイトで講師をしたんですよ。

―医薬品メーカーに就職し、薬局の薬剤師を経て株式会社ファーサスを設立なさいました。いつごろ、どのようなきっかけで独立を考えられたのでしょうか。

こどものころから、なんとなく「いつか起業したい」と思っていました。小学2年のときに父親が勤めを辞めて独立し、その背中を見て育ったということが大きいと思います。薬剤師ですから、広い視点では「薬局経営になにか専門性のあることをプラスしていこう」と考えてはいましたが、具体的なイメージがあったわけではありません。医薬品メーカーを辞める時点でも、まだなにをやるのか見えていなかったぐらいです。

―「これをやろう」と決めて退職したのではなく、退職してからどんな会社をつくるか考えたんですか?

結婚してこどももいましたし、経済的にも安定していたので「このままでは現状に甘えてしまっていつまでも会社勤めを続けちゃうな」と思ったんです。2008年の9月にリーマンショックがあって、世の中が大きく変わったじゃないですか。それなのに自分の周囲の環境はあまり変化がなくて、「このままでいいのかな?」と焦りを感じはじめたんですね。妻も仕事をしていましたし、収入を得るだけならパートや派遣で薬剤師をすればいい。「ともかく変わらなければ」と、思い切って会社を辞めて独立準備をはじめました。

―山口さんは、行政書士や社会保険労務士の免許もお持ちですね。

会社経営に必要なスキルを身に着けておこうと、在職中から経理や法律の勉強をはじめていました。資格を持っている必要はないんですが、まとまったカリキュラムがあったほうが勉強しやすいので、通信教育の講座を受講し、その延長で資格を取得したんです。2005年に日商簿記1級と全経簿記上級、2007年に行政書士、退職後の2010年には社会保険労務士を取得しました。行政書士も社会保険労務士も、それだけで生業にできる資格ではありますが、薬剤師と兼業することは考えていません。法改正をキャッチアップしていくだけでもたいへんですから、中途半端にできることではない。会社設立の手続きに必要なことをいちいち調べなくて済んだし、税理士さんと話すときにもベースがあるので理解しやすので、勉強した内容は役に立っていますね。

―医薬品メーカーを退職後、筑波大学公開講座「サービスカイゼン研修コース」を受講された理由は?

もともと知り合いだった筑波大学の先生に教えてもらったんです。いかにして「サービスの品質管理」をしていくかを学ぶ講座で、形がなくて目に見えないものをどう管理するのか、どう評価するのかという、薬学とはまったくちがった観点がとても刺激的でした。薬局で働きながら講座を受講していましたので、薬局のカスタマーサービスに落とし込んでみようと、2010年から2011年にかけて約40店舗で展開している調剤薬局チェーンでデータ収集と解析、フィードバックをおこないました。顧客満足度調査のコンサルティングは事業として成り立つのではないかと考えて設立したのがファーサスです。コンサルティングをおこなうなかで分析していくと、待ち時間と顧客満足度が密接に関係していることが解ってきた。「なんとかしたい」という問題意識から、処方箋送受信サービス「空飛ぶ処方せん」を開発し、2014年12月にリリースしたんです。

―処方箋送受信サービスが増えてきていますが、「空飛ぶ処方せん」とほかのサービスとのちがいは?

シンプルで使いやすく、個人情報をほかのサービスに流用しないと宣言しているところ、です。患者さんはスマホで処方箋を撮影し、アプリまたはメールで送信するだけ。誤送信を防ぐため、登録した1軒の薬局にしか送信できないようになっているので、確実にかかりつけ薬局に送信できます。薬局ではWebブラウザで処方箋を受信し、受け付けが完了したこと、お渡し準備が整ったことなどはクリックひとつで患者さんにお知らせできます。もうひとつの特徴は、導入時の登録料も毎月の利用料も無料でご提供していること。FAXでの受信については有償オプションとしてご用意しています。

―なぜ、有益なサービスを無料で提供しているのですか?

どんなに便利で優秀なサービスでも、使ってもらえなければ意味がありません。導入店舗が増えてくれば自然と価値もついてくると思っているので、いまはとにかく広める時期だと考えています。現在の導入済店舗は約30店舗で、導入準備中または検討中の店舗が約100軒です。もっと規模が大きくなれば、広告や物販で収益をあげられるようになるかもしれませんし、トランザクションで課金をしていくことも可能かもしれません。

―2015年9月には「薬局お茶の水ファーマシー」をオープンされました。お茶の水という場所を選んだ理由は?

もともと交流があった内科医が、クリニックの近隣で薬局をやってくれる人を探していたんです。サラリーマンが受診しやすいように土日も診察しているんですが、開いている薬局がなくて困っているということでした。住まいは茨城県なのですが打ち合わせなどで東京に来ることも多く、ちょうど都内に拠点がほしいと思っていましたし、クリニックのすぐ近くに物件もあったので開局に至りました。クリニックの診察時間に合わせて、土日も夜まで営業しています。

―処方箋の応需枚数はどのぐらいですか?

現在は1日20枚程度です。声をかけてくださった内科クリニックも開業から1年を過ぎたところですし、門前的位置づけの弊局も一緒に伸びていくと思います。患者さんにとって近くに薬局があるクリニックのほうが行きやすい。実際に、以前勤務していた薬局でも薬局がオープンしたことで目の前のクリニックの患者数が増えましたので、土日もやっているクリニックで近くに薬局もあるということで認知度があがっていけば、患者数も徐々に増えるはず。応需枚数は、1年で1.5倍ぐらいになるのではないかと思っています。

―2015年10月には、ふたつ目の会社「ザイシ」を設立なさいました。事業の内容を教えてください。

薬剤師を対象にしたプレゼンイベントを企画運営しています。満足度調査のコンサルティングをするなかで、つくばエキスプレス沿線の企業と地域を盛り上げていくことを目的とした「TEP(TXアントレプレナーパートナーズ)」でプレゼンをする機会があったんです。ほかにも何人かの起業家がプレゼンテーターとして参加していたんですが、みんな話すのが巧いんですよ。濃すぎず、薄すぎず、バックグラウンドから目的まで的確にわかりやすく伝えていました。それにくらべて、自分は伝える力が弱すぎると実感した。薬剤師がアイデアを活かしていくためには、プレゼン力を高め、アイデアを共有することが必要です。同じ悩みを持っている薬剤師もいるはずだから、相互に発表しあえる場をつくろうと考えてスタートしました。発表の内容は、お薬以外のテーマであればなんでもOKで、これまでは地域包括ケアや笑顔など医療にまつわる話をされた方もいますし、園芸のことを話した方もいます。参加は、フェイスブックを中心に声をかけて募っています。これまでに6回開催して、前回の参加者は20名になりました。「このイベントが好き」と言ってくれる仲間ができ、イベント自体も認知されて安定して運営できるようになってきたので、法人として独立させることにしたんです。

―これからの目標を教えてください。

起業家として、70歳までに10の会社をつくることが目標です。現在までに2社設立しているので、あと8社ですね。パートナーの職種は問わず、自分自身のベースはあくまでも医療に置いて強みを活かしていきたいと思っています。そのために、起業家として、医療業界でもほかの業界でも仲間を増やしていくように心がけています。大きな規模を目指すのではなく、3~4人のユニットをいくつか持って展開していくのが理想です。

しっかり手入れをした包丁です。休日は、いつも魚をさばいているんです。きっかけは、アジを卸す動画を見て、こどものころに母親がアジをさばいて唐揚げをつくってくれていたなぁ、と思い出したことです。よく見ていたし、自分でもできるだろうと思ったんですが、なかなかうまくいかない。1年ほど経った2011年の12月に木屋の出刃包丁と出会い、思い切って購入したらものすごくよく切れて感動しました。それ以来、休みの日にはアジやコチ、タイ、ヒラメ、サバ、オコゼなどいろんな魚を買ってきて調理しているんです。使ったあとはクレンザーでしっかり磨いて、刃物用の油を塗ってしまっています。研ぎに出すと、いつも「よく手入れしていますね」って褒められますよ。

知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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