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薬剤師インタビュー

2016年2月25日

山田歩さん
株式会社葵調剤
藤の花薬局
管理薬剤師
2009年、明治薬科大学薬学部を卒業、チェーン展開の調剤薬局に就職する。福岡県北九州市の調剤薬局に配属。主に有料老人ホーム、グループホームなど施設の在宅調剤に従事する。2011年6月、埼玉県所沢市の調剤薬局に異動し、整形外科を中心とする調剤および有料老人ホームの在宅対応に携わる。2013年2月、株式会社葵調剤に転職。埼玉県内および東京都下の店舗で勤務薬剤師として働いたのち、2013年11月より藤の花薬局 管理薬剤師となる。

―こどものころはお薬があまり好きではなかったそうですが、なぜ薬剤師になろうと思ったんですか?

高校2年のとき、なにげなく求人広告を見ていたら薬剤師の募集を見つけて、自分自身はお薬が好きじゃないけど薬剤師は必要とされる人材なんだと知ったんです。「薬が嫌いな人の気持ちがわかる薬剤師がいてもいいんじゃないか」と思い、薬学部に進学しました。お薬に興味があったわけでも理系に強かったわけでもないので勉強はたいへんでしたが、患者さんに近い目線で学ぶことができたと思います。

―就職した調剤薬局では施設調剤を担当していらしたんですね。

東京に本社を構える調剤薬局のチェーンが事業を拡大するタイミングで人材を募集していたんです。九州や沖縄にも進出すると聞いて、活気がありそうだと思って就職を決めました。配属されたのは、施設調剤をメインに新規オープンした北九州の店舗。会社としても在宅調剤事業をスタートしたばかりで手探りの部分が多かったと思います。薬局全体で13の施設を受け持っていて、薬剤師ひとりあたり2施設から3施設を担当していました。調剤したお薬をお届けするだけでなく、1週間分のお薬を患者さんごとにセットする会社オリジナルの引き出し式ボックスを用意するなど試行錯誤しながら業務をおこなっていた時期で、社長が現場に入っていたこともあってモチベーションは高かったですね。患者さんと接する機会はあまりありませんでしたが、ほかの医療スタッフとの連携をはじめ、在宅調剤の基本は身につけられたと思います。

―葵調剤に転職した理由は?

入社から1年2か月で埼玉県の店舗に異動になりました。整形外科の門前で、施設の在宅調剤もおこなっている薬局です。北九州の店舗では1年に2枚しか処方箋の応需がなかったので、患者さんに直接お薬をお渡しして服薬指導をするのはほぼはじめてでした。投薬に慣れてくるにつれて、もっといろんな処方内容に触れたい、お薬が苦手な患者さんに寄り添える薬剤師になりたいという気持ちが強くなっていき、転職することに決めました。転職後、半年ほどはあちこちの店舗をヘルプでまわり、2014年11月に藤の花薬局の管理薬剤師になりました。

―藤の花薬局はどのような処方箋が多いのですか?

総合内科・小児科・整形外科の門前で、近隣の皮膚科や婦人科、メンタルクリニックなどの患者さんも多い薬局です。処方箋の応需枚数は1日約100枚。患者さんの年齢層も幅広く、処方内容もさまざまで、薬剤師として知識やスキルが求められる一方、やりがいを感じられる環境です。

―2015年8月には薬局内に検体測定室を開設されました。導入のきっかけは?

国の施策としてセルフメディケーションが推進されているなか、弊社でも取り組みをはじめています。検体測定室の開設もその一環です。測定室の開設には、測定設備を整えて届出をし、医療廃棄物や血液が付着したものの処理をきちんとおこなうことが求められます。藤の花薬局をはじめ、スペースがあって、スタッフの人数も揃っている数店舗で導入することになりました。

―開設にあたってはクリニックの協力も必要ですか?

近隣のクリニックとの提携が必須というわけではありませんが、検体測定室の開設に反対の意志を表明された場合は難しいと思います。患者さんの利益を考えてもクリニックと薬局が良好な関係を維持していくことは重要です。弊局の場合は門前のクリニックが「一緒に患者さんを診ていかれたらいいですね」と言ってくださって、スムーズに開設ができました。「薬局で採血する」ということはまだまだ一般的ではありません。わたし自身も、本部から提案されるまで薬局で血液検査がおこなえることさえ知らなかったぐらいですし、患者さんにも「薬局で検査ができるんですか?」と驚かれることが多い。「まずは周知から」という段階ですが、ちょっとした相談は薬局で、治療はクリニックで、という連携ができるようになるのが理想です。

―どのような血液検査をおこなっているのでしょうか。

「HbA1c」と「血中脂質」の測定をおこなっています。検査のご説明をして承諾書に署名していただいたあと、患者さんご自身にディスポーザブルの穿刺器具で指先に針を刺していただき、微量の血液を採取。セルフメディケーションコーナーに設置した機器で検査項目の値を測ります。測定にかかる時間は約5分。結果が出てから、数値のこと、生活習慣や運動などについてお話ししています。

―検査を受けられるのはどのような方が多いですか?

会社員時代に健康診断を受けていて、退職して検査を受ける機会がなくなった方です。アクティブシニア層は思った以上に健康に対する意識が高くて驚きました。検査値が少し高かったりすると、食事を見直したり運動をしたり積極的に生活習慣を改善して「1か月がんばってみたんだけど……」と言って再検査にいらっしゃる方も多いんです。検体測定室の設置を検討していた段階ではフリーターや主婦の方が中心になるだろうと予想していたのですが、意外と少ないですね。「若いから大丈夫」とあまり不安を抱いていないのかもしれませんが、予約の必要もありませんし短時間で検査を受けられるので気軽に活用していただきたいと思っています。

―導入にあたって問題となったことがあれば教えてください。

扱う医薬品の種類も多くもともと仕事量が多い薬局なので、収益性の低い新たな仕事が増えることに対していかにスタッフのモチベーションを維持するかが課題だと感じていました。「やることになったから、よろしく」と言うだけでは伝わりませんから、「検査希望の方は全員、自分で対応する」というぐらいの心持ちで先頭に立って取り組むようにしたんです。しばらく続けていたら「ひとりでやらなくて大丈夫ですよ」と言ってくれるスタッフが出てきて、薬局全体に浸透していきました。いまではスタッフ全員が通常業務の一環として取り組んでくれています。開設から約半年で延べ150人の検査をおこないました。患者さんとのコミュニケーションにもなっていますし、今後は健康食品などをおすすめしていくことも考えています。

―今後、薬局での検体測定はどうあるべきだと思われますか?

もっと多くの薬局でできるようになるといいと思います。実際に測定をはじめて、世の中には健康に興味を持っている人がけっこう多いんだと気づかされました。「結果がその場ですぐにわかるのは手軽でいい」とか「わざわざ病院に行くのもたいへんだと思っていたので、薬局で検査できるのはありがたい」とか言っていただける。とはいえ難しい点もあります。ひとつは、現状は自己採血しかできないこと。握力がとても弱くて針がさせない方や小さなお子さんの検査は難しいんです。「こどもの血液型を調べてほしい」という要望にも対応できません。また、検査をしにくる方はなんらかの結論を求めていることが多いのですが、検査値が赤信号だとしてもそれだけを根拠に「すぐに病院に行ったほうがいいですよ」とは言えません。食事のこと、運動のこと、生活習慣に踏み込んだ健康アドバイスを地道にやっていくしかないので、もどかしく感じることもあります。薬局での検体測定が広まって、薬局でやっていいことがもう少し増えていくといいなぁと思っています。

―最後に、山田さんご自身の目標をお聞かせください。

これからセルフメディケーションが進んでいったとして、どこまで薬剤師に任せてもらえるようになるかはわかりませんが、外国のように処方権まで与えられるような時代がきたときにはOTCも含めて幅広い提案をできる薬剤師になりたいですね。そのためには、病態のことをもっと勉強していかなければいけません。また、近隣に有料老人ホームなども増えてきているので、タイミングがあえば施設との連携もやっていきたい。施設調剤の経験が活かせるのはもちろんですが、投薬を経験したことで添付文書だけではわからない実際に則した知識とスキルが身につきました。施設の医療従事者にさまざまな提案をしながら、地域包括ケアの一端を担える薬剤師になりたいと思っています。

中学から大学まで陸上部に所属していました。専門は中長距離走。社会人になってからも走ることが好きで、時間を見つけてジョギングを続けています。いまは家族もいるので「走るためだけに走る」のではなく、電車で出勤して10km弱の距離を走って帰るということが多いですね。休日はハーフマラソンなどに出ることもあります。東京マラソンにも応募しているんですが、4回とも落選。いつかは東京マラソンにも出場できたらうれしいです。

知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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