薬剤師・薬学生の情報サイト[ファーマシストマガジン]

薬剤師インタビュー

2016年3月25日

髙野幸子さん
袖ケ浦さつき台病院
薬剤部 薬剤課 薬剤師
精神科薬物療法認定薬剤師
2004年に千葉大学薬学部総合薬学科を卒業、同大学大学院医学薬学府(医療薬学専攻)に進学。薬物治療学研究室で心筋細胞再生の研究などに携わる。2006年、同大学院修士課程修了。社会医療法人社団さつき会 袖ヶ浦さつき台病院に就職し、精神科病棟の担当となる。2013年、精神科薬物療法認定薬剤師を取得。2014年に出産し、現在は時短勤務で週5日のシフト勤務を続けている。

―髙野さんはなぜ薬剤師になろうと思ったのですか?

ひとつは、年齢を重ねても続けられる仕事に就きたかったこと。法医学に興味があったのですが学力的に医学部に進学するのは難しそうだったので、同じ医療の現場で働ける薬剤師を目指しました。
もうひとつは、小児ぜんそくから肺炎にかかって入院したことが2回あったり、点滴をしたりしていたこと。当時は薬剤師が患者と直接話す機会はほとんどなかったものの、病院を身近に感じていたことは医療の現場への興味につながりました。

―大学院に進んだ理由は?

千葉大学は大学院に進学する学生が多かったですし、わたし自身も大学で学ぶうちに研究を続けたいと思うようになっていたので進学を決めました。学部卒では医薬品メーカーの研究室に入ることは難しいので、大学院でもう2年学んでから就職活動に臨もうと考えたんです。

―メーカーの研究室を目指して大学院に進学したのに、実際には医療現場の病院に就職なさいました。大学院の2年間で考えが変わられたんですか?

大学院の2年間、実家を出て友人と部屋をシェアして暮らしていました。実家には精神疾患を持つ家族がいて「あまり関わりたくない」と思っていたんですが、離れてみたら客観的に見られるようになり、薬剤師として役に立てるのではないかと考えるようになったんです。血圧や糖などをコントロールするお薬は数値で効果がわかりますが、精神薬は効果がわかりにくい。精神科領域で扱う医薬品は種類も多く、医師によっても処方がちがうことがあります。薬剤師として関われることが多そうだと感じるようになるにつれて研究よりも現場で働きたいという気持ちが強くなっていったので、内科や外科もあって精神科に強い病院に就職することにしたんです。

―現在の仕事内容を教えてください。

精神科チームのひとりとして、精神科を中心とした服薬指導、病棟薬剤業務に加えて、看護師の特定行為に向けた講義の準備を進めています。弊院では、4月から特定行為として看護師が医師の指導書のもとでお薬の処方をスタートするため、看護チームから薬剤部に協力の要請があり、精神薬の薬理分野の講義をおこなうことになったんです。産休、育休を経て現在は時短勤務中なので通常の業務と講義の準備を両立するのはたいへんですが、退勤時間が近くなると仕事を引き継いでくれたりこどもの発熱で早退しなければならないときにシフトを交代してくれたり、職場全体でサポートしていただいているので、自分自身にとってもあらためて知識を確認するいい機会だと思って前向きに取り組んでいます。

―薬剤師として精神科を担当するやりがいや醍醐味は、どのようなところにあると感じていらっしゃいますか?

弊院の精神科に入院しているのは統合失調症と重度のうつの患者さんがほとんど。ご自身に病識がなかったりお薬の効果が体感できない方も多くて、服薬を拒否されたりご自身の判断で中止してしまうことがあるんです。きちんとお薬を飲んでいただくことが重要なので、お薬の説明だけでなく信頼関係を築くことにも重点を置いて服薬指導をしています。服薬を拒否していた患者さんがお薬を飲んでくれるようになったり、退院後に薬局に訪ねてきてくれたりすると、信頼してもらえたことが実感できてうれしいですね。

―患者さんとの信頼関係を築くために工夫していることはありますか?

他科の病棟はチームで対応しているんですが、精神科に関しては患者さんの細かな変化を見ていく必要があるため担当薬剤師制を採用していて、現在、わたし自身は約10名の患者さんを担当しています。もちろん精神科チームの薬剤師3名でしっかり連携しているので、担当薬剤師が不在のときでも医師や看護師からの問い合わせなどに対応することは可能です。患者さんの様子の変化や副作用の疑いなど、気になったことや看護師から提供された情報は、カルテに記入したり薬剤部に置いてある精神科の病棟ノートに書き留めたりして共有しているんです。

―患者さんお一人おひとりの状態を細かく見ていくことが大事なんですね。

とくに副作用のチェックは重要です。たとえば、副作用として手が震える、よだれが出る、足がムズムズするなどの錐体外路症状が出たことによってイライラが募り、結果として治療中の疾病が悪化することもあります。患者さんからヒアリングができるとは限りませんから、いつもと変わったところがないか、医師、看護師、薬剤師を含めた医療スタッフ全員で見ていくことが必要なんです。変化があったときに早期に気づくことができれば処方変更の提案もスムーズにできます。

―薬剤師には、お薬の効果と副作用の両方を注意深くコントロールしていくことが求められるのでしょうか。

患者さんは副作用が出てもうまく説明できず、「飲みたくない」とだけ訴えてくることもあります。そこに共感して寄り添いながら、本質を探っていかなければいけません。精神科の薬剤師には、医師と協働して患者さんのQOLをあげていくことが求められていると思います。たとえば、幻聴や幻覚。幻聴があっても幻聴とは思っていない患者さんもいれば過敏になっている患者さんもいますが、深刻さの度合いを数値などで測ることはできません。幻聴や幻覚といった症状をなくすことではなくて、患者さんがいかに社会との接点を持ってその人らしく暮らしていかれるかが大事なんです。うまく働けている方が、同僚と一緒にランチをしたときにお薬を飲まなければいけないことに苦痛を感じているのであれば、服薬のタイミングを見直すことも必要です。服薬が治療のベースになるのはまちがいありませんが、環境で左右される部分も大きいので、考え方や気分転換なども含めて幅広い提案をおこなうようにしています。

―精神科薬物療法認定薬剤師の資格をとろうと思われたのはなぜですか?

精神科の薬剤師をやっていきたいと思ったときに日本病院薬剤師会の精神科専門薬剤師制度がスタートすると知り、「せっかく精神科に携わっているのだから取得しよう」と、ひとつの目標に掲げました。取得にあたっては、5年間の精神科での実務経験を積んでいること、勉強会で所定の単位を取得すること、筆記試験と50症例の服薬指導症例報告で合格することが必要です。とくに症例報告がたいへんでしたね。処方提案など薬剤師としてなんらかの成果をあげた症例だけを抽出するので、100人から200人もの患者さんを担当してはじめて50症例を報告することができるんです。1度目は落ちてしまい、2度目のチャレンジで合格することができました。

―精神科薬物療法認定薬剤師の資格をとって、なにか変わりましたか?

精神科領域での専門性を持った医師と仕事をさせていただいているので、薬剤師として自分も専門性を持ってやっていきたいという意識がよりいっそう強くなったかもしれません。「ここがゴールではなくて、スタートなんだ」と気を引き締めて、あらためて研鑽を積んでいこうと思いました。資格を取ったからといっていきなりスキルがあがるわけでもありませんし、資格を取らなければできないこともないので、実務の面ではとくに変化はありませんでしたね。

―現在は子育てをしながら時短勤務をしていらっしゃいます。どのような生活サイクルなのでしょうか。

出産前は、育休が明けたらフルタイムで復帰できるかなと考えていたんですが、通勤時間を考えるとちょっと難しくて、時短勤務にしていただきました。通常の勤務が8:30~17:30のところ現在は9:30~16:30と2時間短い勤務時間で、週5日のシフトです。薬剤師になったときから「ずっと働き続けたい」と思っていましたし、出産を機に仕事を辞めるということは考えませんでしたね。職場のみなさんもとても協力的で、時間内に仕事が終わりそうもないと手伝ってくれたり、シフトを調整してくれたり、本当に助かっています。病院の保育所にこどもを預けているので、呼ばれてもすぐに行ける点も安心です。勤務時間が短いうえ残業もできないので、時間内にパフォーマンスをあげようと思うようになりました。

―今後の目標は?

これからも、患者さんに信頼してもらえる精神科の薬剤師としてずっと働いていきたいと思っています。当面の目標は、精神科薬物療法認定薬剤師を更新すること。更新には、筆記試験と25症例の症例報告に合格することと、学会での発表が必要です。2018年に期限がくるので、現在は勉強を重ねながら学会で発表する研究内容を考えているところです。子育て中で勉強会に参加することが難しくなってきていますが、家族にも協力してもらいながらなんとか続けていきたいですし、いずれは上級資格の精神科専門薬剤師の資格も取得したいですね。

ガラケーをずっと使い続けています。いまの携帯は6年目、前の携帯も約5年使いました。最近はスマートフォンを持つ人のほうが多くて「LINEとかもできて便利だから変えたら?」と言われることもあるんですが、携帯電話は通話ができればいいと思っているので、いまのところ変えるつもりはありません。いまの携帯もだいぶ傷だらけになっていますが、壊れているわけではないし電話はかけられるし、それで十分なんです。

知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

薬剤師インタビュー

アクセスランキング

1

[薬事医療業界ニュース]

建物外への出入口が必要‐「調剤所と同様」判断で見解
2

[特集コラム]

施設基準届け出の憂鬱 ~申請から2か月後に届いた受理通知~ ららくま薬局 熊谷信さん
3

[薬剤師インタビュー]

地域のみなさんから広く信頼してもらえる薬剤師になりたい 中央薬局 下村英紀さん

最新ニュース

一覧を見る

produced byアイデムエキスパート

pmdaメディナビ

バックナンバー

pmdaメディナビ