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薬剤師インタビュー

2016年6月24日

吉田聡さん
株式会社LLE 代表取締役
薬局・なくすりーな 薬局長
薬剤師/プライマリ・ケア認定薬剤師/3☆ファーマシスト/日本在宅薬学会 認定エヴァンジェリスト/研修認定薬剤師
2000年、神戸学院大学薬学部薬学科を卒業。同年8月に、札幌を拠点とするチェーンドラッグストアに入社し、店長となる。会社の経営の雲行きが怪しくなったため、2001年4月、調剤薬局チェーンのアインファーマシーズに転職。アイン薬局釧路春採店勤務を経て、2003年よりアイン薬局釧路芦野店の薬局長となる。2004年5月、オホーツク勤医協北見病院に2年の契約で入職。2006年、北見の調剤薬局に転職し、薬局長を務める。2012年1月、株式会社LLEを設立し代表取締役に就任。茨城県古河市の調剤薬局・なくすりーなで薬局長を務めるかたわら、薬ソムリエ協会監事、古河薬剤師会副会長、日本在宅薬学会評議員としても活動中。

―薬剤師になりたいと思ったきっかけは?

薬学部に進もうと決めたのは高校2年のとき。祖父が体調を崩して、ものすごくたくさんのお薬を飲むようになったんです。朝18個、昼12個、夜15個、さらに粉薬が4種類。食べることが大好きでいろんなお店に連れて行ってくれた祖父が「おなかいっぱいで食べられない」と言っていた。わたしはお薬を飲めば治ると思っていたのにそのまま亡くなってしまったことがショックで、お薬のことをもっと知りたいと思って薬学部を目指しました。祖父は胃がんだったと知ったのは、薬学部に入ったあとのことです。

―最初の就職先に北海道のドラッグストアを選ばれたのはなぜですか?

薬剤師の少ないところのほうが必要とされやすいだろうし、どうせならなるべく遠くに行こうと思って、北海道と沖縄を候補に考えました。地元のハローワークに北海道のドラッグストアの求人があって、即決。ところが就職して半年ほどで会社の経営が危なくなって、「これはまずい」と思ってエージェントに相談しました。規模の大きな調剤薬局で経験を積んだらいいのではないかとアドバイスされて、アインファーマシーズに転職を決めました。会社からの要請で釧路に行き、3年勤めて、こんどは病院薬剤師も経験したくなって再転職したんです。

―病院勤務の経験から薬剤師として成長できたと思えるのは、どのようなことですか?

神経内科と糖尿病がメインの50床の病院で、当時、神経内科のことはほとんどなにも知らなかったのでいい経験になりましたね。神経内科ではALSや重症筋無力症、パーキンソン病などの難病を扱っているので、飲み薬も点滴も見たことのないものばかりでしたし免疫治療に触れたのもはじめて。もちろん文献からの知識はありましたが、患者さんを間近に診ることでどんな状態なのか、どんなことに困っているのかを含めて「どういう病気なのか」を実感することができました。また、看護師や臨床検査技師などほかの職種のスタッフとのコミュニケーションも勉強になりました。調剤薬局では処方医と話すことはありますが、看護師と話すことはありません。薬剤師が他職種の医療従事者からどんなことを望まれているのかわかるようになりました。

―2年間の契約で病院に勤務したのち、調剤に戻られましたね。

病院に勤務していたときにアルバイトをしてもいいと言われていて、調剤薬局でも働いていたんです。契約満了を機に、バイト先のオーナーが紹介してくださった薬局に就職しました。もともとは皮膚科の門前薬局だったのですが、入局してまもなく近くに整形外科と婦人科もできて1日に約250枚の処方箋を応需するようになった。入局2年目には若手の薬剤師が入ってきて、わたしが薬局長を任され、社長は社長業に専念するようになりました。

―独立を考えるようになった理由は?

ひとつは、後輩薬剤師のキャリアを考えたことです。多店舗展開している薬局ではなかったので、このままずっとわたしの下にいたのでは薬剤師として経験を積んでいかれないのではないか、と思いました。彼に薬局長をやってもらって自分が薬剤師になることも考えましたが、それもやりにくいだろう、と……。もうひとつは薬剤師向け専門誌の独立特集を読んだこと。ネットで検索していくつかの会社にメールを送り、そのうち1件から「茨城の薬局を引き継がないか」というお話をいただいて2012年に独立しました。

―茨城県というまったく地縁のない場所でしたが、不安はありませんでしたか?

実際に物件を見に行き、立地や経営状態などを確認していたので不安はありませんでした。むしろ、自分の薬局でどんなことができるか考えるのがたのしかったですね。いまでは独自のサプリメントを開発したり、食事や禁煙などの相談を受けたり、健康につながることをいろいろと取り組んでいます。日本在宅薬学会主催の狭間研至医師の「薬剤師のためのバイタルサイン講習会」を受けて以来、投薬や服薬指導以外にも薬剤師が患者さんのお役に立てることがあると強く感じるようになったのが大きなきっかけです。「お薬によってどういう作用が起こっているのか医師に伝えるのが重要。バイタルサインのチェックを薬剤師としてどう使えるか、考えなさい」と言われて、ストンと腑に落ちたんです。まだまだ自分の知識が不足していると感じたので、勉強をはじめました。

―吉田さんはいろいろと資格も取得していらっしゃいますね。

狭間先生の講演をきっかけに、検査値について詳しくは知らなかったため勉強を続けて「認定エヴァンジェリスト」が最初でした。その後、未病から重病、褥瘡まで、新生児からご高齢の方まで、OTCから調剤、病院まで薬剤師の仕事のすべてが学べる「プライマリ・ケア認定薬剤師」、いかにしてよくなる方向に患者さんの気持ちを向かせるか、コミュニケーション力を身に着けるために「3☆ファーマシスト」などを取得しました。資格を取ることが目的ではなくて、薬剤師として学び続けた結果いろんな資格を取得することになった感じです。特定の分野の知識を深めていくというよりは、今後も地域医療の一端を担う調剤薬局の薬剤師としてゼネラリスト的な視点で幅広い知識を身に着けていきたいと考えています。

―コミュニケーション能力マスター、うつ病支援セラピストなどコミュニケーションを重視した資格に目を向けられた理由は?

3☆ファーマシストを取得して、ますますコミュニケーションが重要だと思うようになったからです。じっくり説明してほしいと望む患者さんもいらっしゃいますが、コンパクトにしっかりと要点を聴きたいという方がほとんど。長くても3分で伝えることが聴いていただける分岐点ですね。

―「薬の引き算をする薬剤師」として講演活動もおこなっていらっしゃいます。なぜ「引き算」なのでしょうか。

医療の目的は患者さんの状態をよくすることで、その方法はお薬だけではありません。医師は病気の知識は持っていますがお薬のことはあまり知りません。効能はわかっていても、副作用や作用時間、正しい保管方法については厳密に知らないことが多いと思います。お薬の知識は薬剤師のほうがはるかにたくさん持っています。薬剤師のもっとも大事な仕事は、お薬の効き目を確かめることです。患者さんの調子が悪くなったとき、医師はまず病気の悪化を疑いますが、薬剤師は副作用や相互作用を疑う。いろんな可能性を探りながら患者さんの状態をよくしていくことが重要なんです。減らせるお薬は減らしていきながら、いい状態にできればベストです。そのことをもっと知っていただきたいと思って講演活動を続けています。薬局の屋号「なくすりーな」も「なくす」、「くすり」、「いいな」を組み合わせてつけたんですよ。

―「かかりつけ薬剤師」もスタートし、薬剤師にとってコミュニケーション能力はますます重要になってきていると思います。患者さんとコミュニケーションを取るうえで注意すべきポイントを教えてください。

患者さんの気持ちを少しでも上向きにすることです。薬剤師にとっていちばんの仕事は、患者さんがお薬を飲んだあとの効き目を測ることですが、お薬をちゃんと飲んでいることが前提です。ところが、患者さんに「飲みたくない」という気持ちがあると故意に飲まないのではなくても飲み忘れが増え、結果的に症状が改善しないということがよくあります。コミュニケーションのなかでは「ほめる」のが効果的。「ちょっとやってみようかな」、「いいんじゃないかな」と前向きになれるとお薬をちゃんと飲むようになりますし、気分が晴れること自体も療養につながります。

―今後の目標をお聞かせください。

「服薬学」というものを確立したいと考えています。患者さんのなかには「苦いから飲みたくない」という方がいらっしゃいます。とくにお子さんはそうですよね。ジュースに混ぜる、アイスクリームに混ぜる、それで飲める子はいいのですが、それでも受け付けないときに無理やり飲ませてもますますお薬が嫌いになるだけです。苦手なお薬を克服する方法は「カレーに混ぜると大丈夫」、「のりの佃煮がいい」、「味噌汁に入れる」などこどもによってさまざまです。「おいしい」で「飲みたくない」を克服しようという活動をしている「日本薬ソムリエ協会」で監事を務めているのですが、さらに踏み込んで「お薬をどうやって飲むか」を主眼とした学問にまで深めていきたいと思っています。

身近な「道具」をデコレーションしています。パソコンはキーボードに自分でコルクのシールを貼り、モニターの背面は業者に依頼してスワロフスキーでキラキラに仕上げてもらっていますし、携帯もキラキラ仕様にしています。北海道時代は、レザーのケースを使っていましたね。薬局内は白衣もインテリアも白基調で単調なので、それ以外のところでは素材感やデザインで個性を出すのがたのしいです。

知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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