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薬剤師インタビュー

2016年8月25日

惣坊真理(そうぼう まり)さん(写真 左)
東和薬品株式会社
信頼性保証本部 医薬情報部
薬剤師
2006年、徳島文理大学薬学部薬学科卒業。2008年、大阪大学大学院薬学研究科を修了し、ジェネリック医薬品メーカーである東和薬品に入社、信頼性保証本部の安全管理部で副作用の情報を収集する業務に携わる。2015年4月、同本部の医薬情報部に異動。他部署と連携を取りながら、説明資料や添付文書、ウェブサイトなどによる医療関係者や患者向けの製品情報発信をおこなっている。(写真 左)

山口亜希子さん(写真 右)
東和薬品株式会社
研究開発本部 医薬分析部
薬剤師
2008年、岐阜薬科大学製造薬学科卒業。2010年、同大学大学院薬学研究科修了後、東和薬品に入社する。研究開発本部 医薬分析部 GE科学評価チームに配属され、主業務として医療関係者が現場で必要とするデータの収集と提供をおこなっている。また、大学や医療機関、公的研究機関などとの共同研究および学会報告・論文投稿にも携わる。(写真 右)

―まず、おふたりが薬剤師を目指した理由をお聞かせください。

山口:こどものころは風邪を引きやすくて、よく病院に行っていたしお薬も飲んでいました。お薬を飲むと体調がよくなる一方で、お薬を飲んでおなかが痛くなることもある、そのメカニズムに興味が湧いて、高校のときに意識するようになったんです。
両親から、手に職をつけたほうがいいと言われたことも薬剤師という仕事を意識するきっかけになったと思います。
惣坊:わたしは山口さんほど明確にお薬に興味があったわけではありません。生物や化学が好きだったことと、世の中の役に立てそうかなと感じられたことから薬学部進学を目指しました。

―大学院に進学した理由は?

惣坊:大学3年のときに入った研究室で「がんと緑茶カテキン」に関する研究をして、研究っておもしろいなと感じたんです。がんに関するお薬についてもっと研究をしたいと思ったし、お薬をつくりたいと思うようになって、いろいろな論文を読んでいくうちに大阪大学の大学院が取り組んでいるがんの研究に興味を持ちました。
テーマも大学時代にやっていた研究を活かしながら発展させていけるような内容だったので、進学を決めました。
山口:わたしもお薬をつくる仕事をしたくて大学院に進みました。薬剤師の仕事には目の前の患者さんの役に立てるというやりがいがありますが、メーカーの研究職は広い範囲に影響を与えられる可能性があるんじゃないかと思ったんです。もともとものづくりに興味があったこと、薬学にしかない製剤学という分野を深く学んでいけば医療人としても強みになるのではないかと考えたことも、大学院進学の大きな理由でしたね。

―就職先に、ジェネリック医薬品メーカーを選んだのはなぜですか?

山口:ひとつは、大学在学中の実習で高齢の患者さんのお宅を訪問したときの体験です。たくさんのお薬が処方されていて医療費も高くなっていたので、低価格なジェネリック医薬品に興味を持ちました。もうひとつは、自分が関わった医薬品が、できるだけたくさん世の中に出てほしいと思ったからです。新薬に比べ短期間で開発できるジェネリック医薬品で、多くの医薬品を開発し患者さんのお役に立てる仕事に携わりたいと考えました。
惣坊:ジェネリック医薬品メーカーは扱う品目が多くて、いろんなお薬に触れられるのもおもしろいですよね。
わたしは、新薬メーカーもジェネリック医薬品メーカーも受けましたが、品目の多様性に魅力を感じてジェネリック医薬品メーカーに決めました。

―おふたりのお仕事の内容をお聞かせください。

惣坊:信頼性保証本部の医薬情報部というところで、医療関係者や患者さん・ご家族に向けた製品情報を発信する仕事に携わっています。媒体は、医薬品の添付文書、指導箋、ウェブサイトなどさまざまです。新たな情報提供が必要となるのは、年間約40品目。企画からデザインや印刷の発注、開発や営業など各部署との調整など情報発信に関するすべての業務に関わっているので、仕事の幅は広いですね。
山口:わたしは、社内からの依頼を受けて試験・分析をおこなっています。惣坊さんが在籍している医薬情報部とやりとりをすることもありますし、学術やMRを通じて医療機関からの寄せられた問い合わせに対する根拠データの収集と提供をおこなうこともあります。依頼が多いのは、「輸液に注射剤を混合しても大丈夫か」という配合変化の試験や、割線がある錠剤の分割性の実験などですね。

―試験をおこなってデータを収集、分析するという山口さんのお仕事は、大学や大学院の研究室に通じるところがありそうですね。

山口:そうですね。試験などでは、学生時代の経験が活かせていると思っています。しかし、大きくちがうところは、社内の他部署のスタッフとコミュニケーションを取って、連携しながら実験をおこなっているという点でしょうか。研究開発の部署であっても実験だけおこなっているわけではなく、部署内の会議、他部署との会議も多いんですよ。

―惣坊さんが携わっている医療関係者や患者さん向けの情報提供という業務でも、薬剤師であることは強みになっていますか?

惣坊:薬剤師の資格が必須な職種ではありませんが、どのような情報を提供すればいいのか、どのようなデータが必要なのかを判断する際には、疾患のガイドラインや薬学の知識は必要です。山口さんはじめ研究開発や学術の部署とやりとりをするときにも、薬学の共通の認識があることでスムーズにコミュニケーションが取れる。一方で、患者さんやご家族など薬学の知識がない方の視点も持ち合わせていなければなりません。専門職とやりとりしている内容と患者さんに提供する情報は、基本的な部分は同じですが、どのようなことばを選べば患者さんがわかりやすいのか、どのようなイラストだと伝わりやすいのか、日常の生活との接点をつねに考えていますね。

―やりがいを感じるのはどのようなときですか?

山口:医薬品を製品として世に出すメーカーとして、必要な資料をつくるために情報を収集して分析しているという実感が持てたときです。惣坊さんが携わっている患者さん向けのツールでも、医療従事者向けのツールでも、自分たちが提供したデータが資料として活用されているところを実際に目にすると「よかったな」と思います。
惣坊:わたしも、指導箋など、医療現場の方から「東和さんの資料はわかりやすくて助かっています」と言っていただけたときは素直にうれしくなりました。就職活動の時点では研究職を希望していたんですが、いまでは情報発信をずっと続けていきたいと思うようになりました。自分自身が直接研究に携わっていなくても、その成果を広くお伝えする仕事は研究の延長線上にあると感じています。

―これまでのお仕事でたいへんだったことは?

惣坊:やりがいを感じる部分でもありたいへんな部分でもあるのは、コミュニケーションに多様性が必要なところですね。いろんな部署の人と連携をしていくなかでは、それぞれに立場がちがうし、主張もちがいます。お互いがいちばんいい形になるように、それぞれが納得できる落としどころを探りながら調整していくのは、まだまだ難しいことも多いんです。
山口:医療現場と研究所の認識の差について苦労しています。こちらが試験した結果について「より長期間だとどうなるの?」「別の保存条件ではどうですか?」など追加の質問を受けることもあり、現場の方が持っている要望や不安感を100%くみ取ることができていないときなどにもどかしさを感じます。

―仕事をしていくうえで心がけていることを教えてください。

山口:コミュニケーションをしっかり取るようにしています。分析は「モノ」と「自分」が向き合えばいいと思われがちですが、わたしたちが収集したデータは学術部やMR、医薬情報部を通じて医療関係者や患者さんに伝えられるわけですから、より伝わりやすくするためにはどうすればいいか、つねに考える必要があるんです。また、データが出てから結果を報告するだけでいいのではなく、データを必要としている部署と情報を共有しておくことも大事。全体会議で経過報告をするほか、細かなことはメールや電話などで相談しながら分析を進めていますし、試験をおこなった結果、改善が必要になることもありますが、そのときにはデータを渡すだけではなくて対処方法まで見つけて提案するようにしています。
惣坊:山口さんはじめ、開発や分析の方たちもコミュニケーションを重視してくださっているおかげで、とても助かっています。情報をリリースする日も決まっているので、しっかり進捗管理をしていくことが重要です。新製品は年に2度の薬価収載のタイミングに出ますので、情報ツールの作成にかけられる時間は申請から発売までの約1年4か月。時期のちがうものも並行して進んでいますので、部署内はもちろん他部署とも小まめにコミュニケーションを図って仕事を調整していくことが、円滑な進行には必要不可欠です。
山口:正確性の高い仕事をすることは大前提で、みんなで協力しながら患者さんに医薬品をお届けしているという意識を持つことが大事ですよね。割り振られた仕事をこなすだけではなくて、忙しいときには担当以外の仕事のサポートをするというように、チームワークで成果をあげていくことが自然とできる職場だな、と感じています。

―今後の目標やビジョンをお聞かせください。

惣坊:どんなにいいものをつくっても、情報をきちんと発信していかないと、そのよさは伝わらないし製品は売れません。医療関係者に採用してもらえなければ、当然患者さんに届くことはありませんから、研究開発の部署でつくったもののよさを最大限に集めて、情報提供していきたいと思っています。少しでもわかりやすいもの、伝わりやすいものをつくるために、医療現場から意見をいただいて改善していくこともあります。いままでもやってきていることですが、現在は部署としてもっときっちり体制化してやっていこうとしているところなので、より高い意識を持って取り組んでいくつもりです。
山口:わたしの目標は興味も含めふたつあります。ひとつは、別な視点から製品を見てみたいなと思っているんです。惣坊さんが以前やっていた仕事で、副作用情報や医薬品のネガティブな面を検証してみたいです。もうひとつは、入社以来続けている分析の仕事で、もう少し医療現場との連携を強めていくことです。現場の薬剤師さんたちは「ちょっと不安に思っているけれど、なんとなく大丈夫だろうと思って使っている」とか「実際に使っていて問題は起きていないけれども、エビデンスがほしい」ということがあるようなんですが、そういうことを相談してもらえる窓口のような機能も担えたらなと思っています。そうすれば、企業と現場の距離も縮まるんじゃないかな、と……。
惣坊:いまは学術部が意見を収集していますよね。
山口:そうですね。現場で直接患者さんと接している薬剤師さんが気軽に相談できる窓口になって、問題解決に一緒に取り組めるような仕事ができたらいいな、と思っています。

―女性は、結婚、妊娠、出産というライフステージの変化にともなってワーク・ライフ・バランスを考える必要性が高まります。ご自身がお子さんを持ったときには、育児との両立についてどのようにお考えですか?

惣坊:弊社は産休育休の制度もしっかりありますので、今後も情報発信の仕事に長く携わっていきたいと思っています。
山口:短時間勤務で働いている先輩もいますし、女性が働きやすい環境が整っていると感じています。わたしも、できる限り仕事を続けていきたいですね。

豆からコーヒーを淹れることにはまっています。最近はドリッパーも収集をはじめました。ドリッパーの形状や材質のちがいによって、同じ豆でも味が変わっておもしろいんです。いまは10種類ぐらい持っていて、気分によって使い分けています。豆は、自宅の近くに好みの焙煎度合をオーダーできるお店があるので、そこで買っています。平日の朝からコーヒーを淹れられると幸せな気分になります。(惣坊さん)
1年ほど前にゴルフをはじめたんですが、ゴルフを教えてくださった方に「飛ばしたかったら男性用のクラブがいいよ」と言われて、ゴルフの基本と言われる7番アイアンだけは男性用のクラブを使っています。でも、男性用は重いし長いし、すべてのクラブを男性用にして使いこなすだけの体力はなかったので、ほかのクラブはぜんぶ女性用で揃えました。ゴルフがきっかけで同期の友人や大学院時代の先輩とも再会しましたし、交流の輪が広がっていくのがいまはとても楽しいですね。(山口さん)

知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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