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ポイント付与、負担金減免が焦点‐日薬などは反対姿勢貫く

2011年01月05日(水)

 大手チェーン薬局を中心に広がりを見せている、保険調剤の支払いに対するポイント付与サービス。日本薬剤師会や日本保険薬局協会は否定見解を示しているが、厚生労働省は「法令上、明確に禁止できる規定はない。それが悩ましいところ」(吉田易範薬剤管理官)としており、解決への見通しは明るくない。

 日薬は、昨年9月末の定例会見で、児玉孝会長がポイント問題に言及し、「保険診療の概念を崩しかねない」と懸念を表明して以降、「より質の高い調剤サービスで競い合うべきで、商業主義的な競争は職業倫理にもとる」「医療の質の低下、国民皆保険制度の崩壊につながる」と攻勢を強めているが、患者にとっては直接的なデメリットが分かりづらい。

 「100円の支払いに1ポイントつけます」と言われて、メリットを感じることはあっても、悪く受け止める一般国民は少ないだろう。

 ただ、保険薬局が一部負担金の1%をポイント還元するということは、調剤報酬の0・1~0・3%を、自ら手放す考えがあるとも受け取れる。2010年度診療報酬改定は10年ぶりのネットプラス改定だったが、増額は0・19%に過ぎず、ポイントサービスによって、医療関係者だけでなく、政府にとっても重要なテーマとなっている診療報酬改定が、空虚さを帯びる。

 また、公的医療保険制度は、原則2年に1回改定する点数表告示で、全てのサービスについて、全国一律の公定価格が決められている。これが積み上がった医療費のうち、患者の一部負担金は健康保険法で決められており、費用を支払う患者だけでなく、医療機関、薬局にも、災害など厚労省令が定める特段の事情がある場合を除いて、決められた支払いを受け取る義務が、健保法と療養担当規則によって課されている。患者と医療提供者との合意があっても、「減額」は認められない。

 保険調剤に対する支払いにポイントを使った場合については、厚労省も「一部負担金の減額に該当する」と明確にしており、現在行われているポイントサービスでも、こうした事例は確認していないという。

 では、貯まったポイントで公的保険とは無関係の景品と交換したり、ドラッグストアで、一般薬や生活用品を購入する際の割り引きに使う場合はどうなのか。

 藤井基之参院議員の質問主意書に対する政府答弁書では、ポイントの提供や使用が一部負担金の減額に当たれば、健保法や療養担当規則に違反するとの解釈を示しているだけで、「一部負担金の減額に当たる」のがどんな場合なのかは不明で、「減額に当たらない場合」があるとも解釈できる。

 また、厚労省の吉田薬剤管理官は、「医療の担い手、医療提供施設として質の高い調剤サービスで競い合うべき」「経済的な面での競争は、好ましくないと考えている」と理念的には否定的だが、法令上の対応は、「過度なサービスで減免に当たるか個別判断するしかない」と述べており、必ずしも一律に禁止されていないようだ。

 しかし、減免に該当するかどうかの判断基準を明確化すると、該当しない範囲内なら可能となって、助長につながることを警戒する声も業界内にはある。

クレジットカードとは違う

 ポイントサービスの即時全面禁止を求める、日薬の考え方は明確だ。11月10日付で児玉会長から都道府県薬剤師会会長に宛てた文書では、「一部負担金の支払い時に減免していないとはいえ、間接的もしくは結果的に減免となる可能性があるばかりではなく、かつて個別指導や共同指導などにおいて不適切であるとされてきた、過剰な景品類の提供という行為にもつながりかねない」としている。

 自民党厚生労働部門会議薬事小委員会が12月14日に行ったヒアリングでは山本信夫日薬副会長が、「一部負担金を対象としたポイント付与は、他の物品等と交換が可能であることから、患者の視線で見れば、結果的に一部負担金を減免することと同じ」と説明。「保険医療へのポイントサービスの導入は、医療に価格競争の原理を持ち込むことになり、社会保障の理念に反する」との見解も示した。

 また、既に認められている、クレジットカード払いと同様ではないかとの見方があることについては、政府答弁書の決定を受けた12月3日付の見解の中で、次のように解説している。

 「クレジットカード会社の提供するポイントサービスが、カード会社と患者との関係であるのに対し、保険薬局のカードを介して提供されるポイントサービスは、保険医療提供者と患者との関係である点で大きな違いがある」

 日本保険薬局協会も11月22日付で岩崎壽毅会長名の文書を会員に発し、日薬との協調を表明。「一部負担金の支払い分をポイント付与の対象とすることは容認しがたい」「良質かつ適切に業務を行わなければならない医療提供施設としての保険薬局は慎重に対処すべき」と強調している。

 一方、ポイントサービスを実施する薬局を会員に持つ日本チェーンドラッグストア協会には温度差がある。12月6日の常任理事会の後、[1]調剤の一部負担金のポイント付与は否定しない[2]保険制度による国民医療の維持の観点から、各社の冷静で常識的な対応をお願いする[3]今後の調剤の進展状況を冷静に見つめ、適時、常任理事会で議論していくと共に、ブロック総会等を通じ、会員との意見交換を行っていく――との見解を発表した。

保険指定の基準明確化を

 もう一つ、日薬が注目する保険制度に関連する問題に、保険薬局の指定の取り扱いがある。

 医療機関と一体的な経営や構造の薬局は、保険指定を受けられない。しかし、近年、保険薬局を経営する大規模商業施設が所有する土地を、「医療モール」形態で医療機関が借りるケースが出てきた。そのため厚労省保険局医療課は08年3月に事務連絡を発し、薬局の土地や不動産を医療機関に貸すことだけによって、薬局の独立性を否定しないとの判断を示した。

 厚労省によると、事務連絡によって従来の運用が変わるものではないというが、山本氏は、「明確に断っていないため、逆手に取った許可申請が行われ、従来の方針が変更されたかのように、これを容認する地方厚生局が目立つ」と指摘する。また、医療機関と一体化した構造でも、公道を介して行き来できるという理由で、指定が行われているといった保険指定に関わる問題事例があるという。

 さらに山本氏は、社会保険事務局からと地方厚生局に保険指定の事務が移管されたことで、都道府県薬務局と連動しにくくなっているのではないかとの見方も示した。

 そのため日薬は、早急に解決すべき課題として、次の5項目を挙げている。

 [1]医療機関と一体的な構造の薬局が保険指定を受けないよう、明確な基準を作る。

 [2]薬事当局と連携し、医療機関との賃貸借関係や所有地との関連も指定の判断基準とする。

 [3]大規模商業施設の事例を特例として明確化する。

 [4]医療機関と薬局の構造的、機能的な一体性は医薬分業の趣旨を破壊することになるため、そのような薬局は保険指定しない。

 [5]公道を介するという理由だけで独立性を判断すべきでない。

<ポイントサービスに関する政府答弁書(要旨)>
 健康保険法等の医療保険各法においては、「ポイント」の提供または使用自体を規制する規定はないが、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第4条第1項等において、保険薬局は健康保険法第74条の規定による一部負担金等の支払いを受けるものとされ、その減額は許されないことから、「ポイント」の提供または使用が一部負担金の減額に当たる場合があれば、これらの規定に違反する。

 保険薬局が担当する療養の給付については、健康保険法等に基づき、その適正な実施を確保しているところであり、「ポイント」の提供が、直ちに「保険医療の質の低下」を招いたり、「公的医療保険制度の根幹を揺るがすことにつながる」とは考えにくいが、今後とも、健康保険法等に基づき、保険薬局に対する適正な指導に努めたい。(薬事日報

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知っトク!おトク!豆知識

健康・医療分野におけるITC化 国民がメリットを感じられる今後の方向性とは
現在、医療情報のITC化は主官庁である厚労省と総務省で進められています。病院や薬局、そして介護も含む地域医療連携の全体をネットワーク化し、個人の健康・医療・介護分野の情報をパーソナルヘルスレコードとして本人が一元管理・活用できるようにします。ITC化された情報をスマホアプリで見ることができれば、利用者はどんな診断や投薬をされているかがわかります。また、本人自らが情報を持ち運ぶことにより、引っ越しなど地域を超えての活用や、複数診療科での活用、介護分野の多職種連携チームでの活用が可能となります。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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