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特集コラム

漢方薬の魅力 ~こころ、からだ、一緒に治してゆく優れた概念~

2015年9月25日

わたしが漢方薬を深く学びたいと思ったのは、ある女性が不妊治療をはじめたのがきっかけでした。
薬剤師として何かサポートできることはないかと、不妊治療に使われるお薬を調べていました。そんなときに中医学の周期療法という言葉を知って興味をもちました(周期療法とは西洋医学の月経周期のメカニズムと中医学の考え方を合わせた不妊の対処法です)。それをさらに詳しく知りたいと思ったことと、病気の原因を追求し、体質から改善させることに重きをおく中医学、東洋医学の考え方にも次第に惹かれていきました。


西洋医学的な不妊治療では、赤ちゃん(受精卵)をつくろう、つくろうとしています。しかし中医学では、赤ちゃんが元気に育つための体づくりを大切にするという点で大きく異なっていました。しかも体づくりをしていくことで、西洋医学的な治療の効果を高めることもあるし、また西洋薬による副作用を軽減することもあるということを知りました。
西洋医学は、個別の検査数値を重視した対症療法的な治療が特徴といわれます。日本の不妊治療の流れのなかにも、からだ全体を診ずに体質改善や生活改善をしないうちから、高度な生殖医療技術が勧められていることが少なからずあるそうです。本来、男女には子どもをつくり育てていく能力が備わっていると思います。東洋医学を勉強しているとそうした本来の力を見直させてくれます。


漢方では「人も自然の一部」という考えが基礎にあります。地球の環境が人を生んだのですから当然そうなのです。人よりも力の強い動物はたくさんいますし、過去にも存在していました。しかし、そういった動物が絶滅に瀕し、人は栄えています。それは人が自然と調和する知恵を身につけているからです。
寒いときは服を着込んであたたまり、暑いときには薄着ですずむ。これが体調管理の基本中の基本です。生活する環境がちがえば、食べ物もちがうし、過ごし方も変えて対応し、環境と丁度よいバランスを保つことが健康である秘訣です。


漢方薬でもからだ全体のバランスを考えます。
漢方を「気血水」や「陰陽」などの理論から勉強しようとすると、難しくとっつきにくく感じるかもしれません。しかし、漢方による治療原則はシンプルです。どこに不調の原因があるのかが分かれば、あとは自然の法則に従いバランスをとるようにお薬を選びます。


不足していれば補う。悪いものは追い出す。滞っていれば巡らせる。冷えていれば温める。乾燥していれば潤す。
これは現代的な医療の場合、血圧が高いときは下げる、赤血球が少ないときは増やすなど、一見すると似ていますが全然ちがいます。数値だけを治療していてその根本的原因の治療ではないことが多いです。漢方では数値や画像に表れないからだの不調をとらえるのが得意なのです。


たとえば痛みの訴えがあれば、とりあえず鎮痛薬で様子をみて、というのも可能でしょう。しかし、もし漢方薬を使って、ということになった場合、とりあえずこの漢方薬で、というのが難しくなります。
漢方薬でも痛みに有効な方剤がいくつかありますが、漢方的な痛みに対するアプローチはさまざまで、漢方薬を使おうとした場合、その痛みが起こっている原因をある程度探っていかなければいけません。そうでないと、服用してもまったく効かないということが起こり得るからです。
何時に寝ているのか。どんなものを好んで食べているのか。どんな仕事をしているのか。性格はどうか。どのようなときに症状が悪化するのか。冷えはあるか。ストレスの状態はどうか。
さまざまなことから症状の原因を探り、からだのなかで何が起きているのかを考えます。数値的なことだけではなくて、その方がいつもどのような生活を送っているのか。そこまで患者さんのことを理解できれば、薬剤師として、服薬指導だけでなく、生活面でも適切なアドバイスができるかもしれません。


西洋薬と比べると効果の切れ味では劣ることは当然あります。細菌感染症に対して、抗生物質の効果は素晴らしいです。しかし、漢方薬も病と闘うための免疫力を高める(体力や気力を補う)ということで出番はあります。
「うつ」の方に対しては漢方薬よりもSSRIなどの抗うつ薬の方が効果は確実ですが、抗うつ薬を使用するとき抗コリン作用による副作用が問題になります。そういう副作用に対して漢方薬でフォローしてあげることはできます。
抗がん剤治療中に漢方薬を併用されることも増えています。冷え症や未病といった、西洋医学では対応できない症状も漢方薬は対象です。急性期から慢性症状まで、漢方薬の応用範囲は広いです。


いま西洋医学で治療をしている場合でも、漢方の理論を合わせ、病気が進行して高度な医療が必要になることを未然に少しでも抑制することができるのであれば、多くの方が精神的にも金銭的にも救われるのではないかと思います。現代社会の生活スタイルは多様です。食生活の乱れ、日常のストレスなど複雑な原因によってホルモン分泌バランスを崩しからだの不調を招いています。今後、漢方の理論はますます重要さを増し、普及されることが望まれてきているように感じます。


最初の話にもどりますが、当時不妊治療をしていたのはわたしの妻であり、あれから5年近くが過ぎ、この記事を書いている現在は第二子を妊娠中です。もちろん産婦人科の先生と妻自身の努力のおかげですが、漢方薬が少しでも手助けできていたとしたらうれしいです。


これからもっと漢方薬が広まって、多くの方に貢献できることを願っています。


 

漢方薬・生薬認定薬剤師 田伏将樹
薬剤師が漢方薬をわかりやすく解説するサイト「漢方薬を始めよう」


知っトク!おトク!豆知識

変わる薬局薬剤師!在宅医療の担い手に
2005年の国勢調査によると、2025年までの都道府県別高齢者人口(65歳以上)の増加数は、東京都・神奈川県・大阪府・埼玉県・愛知県・千葉県・北海道・兵庫県・福岡県で、日本全体の増加数の約60%を占めるそうです。今後、ますます需要が増加する在宅医療を支援するために、在宅療養支援医療機関は2010年に届出数12,818件となり、右肩上がりです。地域医療におけるチーム医療化は必然となり、安全で安心なシームレスな医療体制の確保のために、薬局薬剤師の在宅訪問業務スキルは必須条件となるかもしれません。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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