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特集コラム

マイナンバー制度と今後の医療への影響

2015年12月25日

マイナンバー制度とは

マイナンバー制度は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」で規定されており、日本に住む個人にひとつの番号を付して、社会保障や税の分野などで効率的に情報を管理するものです。
マイナンバー制度により、複数の機関に存在する個人の情報が同一の情報で管理できるため、行政の効率化、国民の利便性の向上、公平かつ公正な社会の実現が図られるとされています。


個人へのマイナンバーの通知は、2015年10月から開始し、2016年1月から利用が開始されるため、何かといまは注目されています。もっとも、マイナンバーは、法律で利用目的が制限されており、法律や自治体の条例で定められた行政手続でしか使用することはできません。また、株式会社などの法人にも法人番号が付されます。


医療従事者等とマイナンバー

以上のとおり、マイナンバーは法律で定められた行政手続のみで使用することが認められているため、病院や薬局などでマイナンバーを利用することはできないことになります。医療については、現在、マイナンバーとは別の番号での管理が検討されているところです。


それでは、病院や薬局などがまったくマイナンバーは関係ないかというとそうではありません。病院や薬局においても、医療保険等の社会保障や、源泉徴収等の税金の手続などもおこなっています。したがって、一般の民間企業と同様に、医療従事者も雇用主に本人や家族のマイナンバーの提出を求められる場合もありますし、一方雇用主である病院や薬局においては、マイナンバーの取得や管理方法の体制を構築しておき、利用開始後は、社会保障や税の手続においてマイナンバーを記載することが必要になります。
また、民間企業が講演や原稿の執筆を依頼し報酬を支払う場合、報酬から源泉徴収をしなければならないため、外部で講師などをおこなった場合には、マイナンバーの提供を求められる場合があるでしょう。


マイナンバーと医療

マイナンバーは簡単にいうと以上のような制度ですが、社会保障や税のために利用するといっても、批判などもあるなか、どのような形態になっていくのか不明な部分もあります。今後は、預貯金口座への付番、特定健診・保健指導、予防接種に関する事務での一部の利用が決まっていますが、医療全般への利用は現時点では認められていません。医療においても、番号などによって患者の医療情報が一元管理できればと考えられているところですが、医療というプライバシーの配慮がより必要な情報については、利用に慎重な意見もあり議論もあるところです。また、医療情報の共有ということになれば、民間の業者が多く利用するということもあるため、情報管理の問題もでてくるでしょう。


現在の方向性としては、医療については、マイナンバーと別の番号を国民に割当て、マイナンバー制度のインフラを一部活用することが検討されているようです。
このような制度が普及すれば、医療情報が一元化できよりよい医療の提供が可能となると考えられますが、マイナンバーのような普遍的な番号が仮に外部にもれて、医療情報が結びついていれば、回復できない損害が発生するという懸念もあります。また、前記のとおり、導入された場合の病院や薬局のセキュリティーの問題も考えなければなりません。


先日、個人情報保護法の改正が国会で審議され成立しました。この改正により、通常の情報より慎重に扱うことが要請される「要配慮個人情報」という情報が定義されました。この「要配慮個人情報」には、「病歴」という項目が加わっています。医療情報については、慎重に取り扱う必要があるなか、情報の共有の要請も強くあります。この情報保護と利便性に関して、どのようなバランスをとっていくのか更なる議論が必要になってくると思われます。


個人情報保護法の改正

なお、改正された個人情報保護法は、まだ、施行日が決まっていないものもありますが、個人情報の定義を明確化し、適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保するため匿名加工情報が新設されました。この匿名加工情報によりビックデータの活用がしやすくなることが期待されています。また、個人情報の保護を強化するため、個人情報データベース提供罪が定められ、前記の「要配慮個人情報」が新設されました。「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの等が含まれる個人情報をいいます。さらに、これまで個人情報保護法の規制の対象外だった情報の件数5000件以下の事業者も規制対象となることになります。


この改正は、個人情報を扱う病院・薬局また薬剤師に大きな影響を与えるものですので、施行がされる前に、変更の内容と、どのように運用していく必要があるのかは検討しておく必要があるでしょう。

 

弁護士・薬剤師 赤羽根 秀宜

赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)

1997年に薬剤師免許を取得後、調剤薬局勤務を経て法科大学院へ進学。
2008年に新司法試験に合格し、2009年、弁護士登録。現在は、企業法務、一般民事を取り扱う弁護士として活動。また、薬剤師としての知識経験をいかして、調剤過誤や薬事法・薬剤師法にかかわる問題を取り扱い、業界誌などでの執筆や講演もおこなっている。

知っトク!おトク!豆知識

どこまで増え続ける薬局!
2014年度の厚生労働省 最新衛生行政報告例の結果によると、2014年度末時点での薬局数は5万7784軒と前年度の5万7071軒より713軒(12%)増加していることがわかりました。5年前とくらべると4000軒以上増えており、まだまだ薬局の増加は続いているようです。都道府県別に人口10万人対薬局数の推移を見ると、もっとも多かったのは佐賀県の63.8軒、もっとも少なかったのは福井県の35.7軒でした。2014年度末のコンビニ数は5万1814軒ですので、年度で比較すると5970軒薬局のほうが多いようです。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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