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特集コラム

施設基準届け出の憂鬱 ~申請から2か月後に届いた受理通知~

2016年7月25日

2016年6月も半ば、関東信越厚生局より、薬局に郵便物が届けられました。厚生局からの書類というと、なんとなくそわそわしてしまうという気持ちは、開局している方であれば共感いただけるかもしれません。居ても立ってもいられず、しかし恐る恐る開封してみましたところ、なかには施設基準受理のお知らせが入っていました。


4月初めに書類を提出してから2か月以上が経過しての書類受理の通知。ホッと胸をなで下ろすと同時に、やるせない思いもこみ上げてきます。この間、厚生局からは何の連絡もなかったわけですから。申請を出したものの、もしそれが認められないなんていう話になれば、何よりも患者さんに多大なる迷惑がかかってしまいます。
書類を提出してから受理までの2か月半あまり。地域によって、また薬局によってその時間は前後するものの、保険薬局の現場は常に落ち着かない状態にあり、書類受理の状況を気にかけながら業務を続けてきました。そうした状況を、お役所の方々はどのように考えているのでしょう。いやそれ以前に、そうした状況にあることすらご存知ないのかもしれません。


例年にも増して提出から受理まで時間がかかった原因は「医療に係る地域活動」にほかなりません。3月31日に発出されました疑義解釈資料1では、


地域の行政機関や医療関係団体等が主催する住民への説明会、相談会、研修会 等への参加や講演等の実績に加え、学校薬剤師として委嘱を受け、実際に児童・生徒に対する医薬品の適正使用等の講演等の業務を行っている場合が該当する。 なお、企業が主催する講演会等は、通常、地域活動の取組には含まれないと考えられる

と補足がなされました。学校薬剤師が必須条件なのではないかと解釈できる表現があり、現場が混乱したのは記憶に新しいところです。
その後、各地で薬局に確認の電話が入ったり、書類が差し戻されたりといったことも耳にしましたが、地域や担当者によって対応が異なるといった状況もあったようです。統一した見解を出せず、解釈も厚生局ごと、また担当者ごとバラバラで、かかりつけ薬剤師指導料に関する届け出は右往左往。結果、そのしわ寄せは、すべて現場に来てしまったのです。


書類を審査する側から示された「それでは要件を満たしませんので、受理できません」という判断。もちろん、その基準がきちんとしており、理由が明確であれば提出した側も納得できます。しかし実際そうではなかったように思えます。5月19日に発出された疑義解釈3にて、「医療に係る地域活動」について、更なる補足がなされました。ここではじめて、「主体的・継続的」という文言が登場します。それまでは「実績」という表現がなされていましたが、解釈が大きく変わったことを示します。また、学校薬剤師や休日当番薬局などは「当面の間認める」と記載されたことも、それまでとは大きなちがいでした。


端的に表現すれば、「基準が変わった」わけです。4月当初は認められなかったものも、その後、再提出したところ認められたという話も聞きます。書類に記載された、そして実際におこなってきた「医療に係る地域活動」そのものはまったく同じ内容なのですが、タイミングによって受理されたりされなかったりなどという話も聞き、理不尽さを覚えました。
さらに、そうした事態は現場を混乱に陥れます。書類が受理されるものと思って、かかりつけ薬剤師指導料や基準調剤加算など、4月から見込みで算定してきたものも、受理されないとなればすべて清算せねばなりません。患者さんへの返金処理からレセプトの請求まで、すべてやり直さなければならないのです。


厚生局によって、また担当者ごとに基準が変わってしまうというのは、この件に限らず、以前からいわれていることですが、現場の人間からしてみると、理解に苦しむことも少なくありません。書類提出を受けてから受理までの透明性を確保すること、必要なことではないでしょうか。


もうひとつ、お役所の方々にお願いするとすれば、スピード感をもって業務をおこなってもらうことです。提出から受理のお知らせまで2か月という時間はあまりにのんびりしているのではないかと考えるのは、私だけではないはずです。
もちろん、膨大な書類の審査には時間もかかります。どのような体制で業務をおこなっているのか知らずに批判することの危うさも承知しています。しかしもし民間であれば、書類受理通知までに2か月以上かかるとしたら、会社同士でしたら信頼関係にヒビが入りますし、担当者であれば上長からの呼び出し必至です。


何より、「施設基準の届け出は4月14日(必着)」と言っておきながら、それに対するレスポンスがおざなりであることも大きな問題です。こうしたダブルスタンダードによって、今回の件だけでなく、厚生局と保険薬局の間の信頼関係にまで影響を及ぼすことになりかねません。お役所の方々は、書類を見るのに一生懸命で、書類のその先にいる現場の人間、そして患者さんのことを忘れてしまっているのかもしれません。
そのあたりをもう少しイメージし、現場のことを理解する姿勢を持って業務に当たっていただくことを願わずにはいられません。


 

ららくま薬局
薬剤師 熊谷 信

熊谷 信(くまがい しん)

信州大学経済学部を卒業後、自動車ディーラーに勤務するが、「自分で薬局を開きたい」との思いから社会人入試を経て東邦大学薬学部に入学。卒業後、勤務薬剤師を経て、2014年4月、長野県諏訪市にららくま薬局を開局する。日本薬剤師会会員。
現在、個人ブログ『薬局のオモテとウラ』など精力的に執筆活動をおこなっている。
執筆例:『薬剤師的にどうでしょう』(日経DI Online)、『かかりつけ薬剤師PERSONAL』(薬局新聞)

知っトク!おトク!豆知識

地方創生の総合戦略のひとつ!奨学金返還補助制度
薬学部を含めて大学生のなかには日本学生支援機構などの奨学金を借りている人も多いのでは。しかし、卒後の返済に悩まされる人も多く、NPO法人や奨学金問題に取り組む団体などの相談機関があるのが現実です。地方創生に向けて取り組む国は総務省と文科省が連携し、地方公共団体と地元産業界が協力して、将来の地域産業の担い手となる学生を応援するための取り組みをはじめています。それが奨学金返還補助制度です。助成要件を満たせば奨学金の一部返還を助成する制度で、富山県や山口県では薬学部が、鳥取県では薬剤師の職域が対象です。

今月号の目次
今日はなんの日?
  • 2016年9月9日
  • 救急の日
  • 厚生労働省が1982年に「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから制定。救急医療関係者の意識向上と、国民の正しい理解を深めることが目的である。
  • 2016年9月9日
  • 骨盤臓器脱 克服の日
  • 尿失禁・骨盤臓器脱で悩む女性ゼロをめざすひまわり会により制定される。骨盤臓器脱の英語表記は「POP」と略され、逆転すると「909」と読めるため。
  • 2016年9月22日
  • フィットネスの日
  • 日本フィットネス協会の設立記念日であり、9月は厚労省が実施する「健康増進普及月間」でもあるため制定される。国民の健康体力づくり推進が目的である。
  • 2016年9月24日
  • 歯科技工士記念日
  • 1955年設立の日本歯科技工士会により、2005年9月に50周年を記念して制定されたふたつの記念日のひとつ。もうひとつは10月8日の「入れ歯感謝デー」。

薬剤師の地域別時給[東日本]
地 域 東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 群馬県 栃木県 静岡県 山梨県
平均値 ¥2,302 ¥2,203 ¥2,126 ¥2,229 ¥2,400 ¥2,508 ¥2,309 ¥2,255 ¥2,051 -
薬剤師の地域別時給[西日本]
地 域 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 岡山県 愛媛県 福岡県
平均値 ¥2,249 ¥2,111 ¥2,114 ¥2,020 ¥2,111 ¥2,145 ¥1,960 ¥2,771 ¥1,913
(2015年2月~2016年1月)
AiDEM 株式会社アイデム 人と仕事研究所調べ

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